私が決める





無事にみんなと合流できてホッとした気持ちを早々に押し込めて、これから来るであろう人物に備えてアイテムと装備を確認した。


「やれやれ、思ったより役に立たなかったようね」


暗闇の中から女の声が聞こえる。ぼんやりこちらへ近付いてくる姿は、背丈もあまり自分と変わらないくらいでインディアン風の服を着た女だった。


「探したわよ、ガーネット姫」

「ど、どちら様?」
「え、美女じゃん」

「(2人共、鼻の下伸ばさないでよ!)」


ダガーに仲良く2人で怒られてしまったが、リアルラニのエキゾチック感。何とも言い難い妖艶な雰囲気を纏った大人なセクシーさに言葉が出てこない。


「私はラニ。ブラネ女王の命令でガーネット姫を探していてね」

「お母さまの?お母さまがわたしに何の用があるのですか?
………アレクサンドリアに戻るつもりはありません」

「あいにく、用があるのはガーネット姫じゃないのよ。ガーネット姫が城から持ち出したある物に用があるの。
返してもらいましょうか!あれはブラネ女王の物ですから。
………そうなるとそこの女がツカサ?アンタは一緒に来てもらうわよ」


ビシッ!と指された先には私しかいない。
しかしブラネ女王に狙われていると思うと、嫌な気しかしなかった。


「え、私?私はアレクサンドリアに縁も所縁もないのに何で女王が?」

「アンタに関しては、女王じゃないわ。何て言ったかしら………ああ、確かクジャとかいう男」

「クジャだって!?
どんな目的かは知らないが、あいつにツカサは渡さない!」


私より早く反応したジタンの顔を見ると、怒りのような目付きで睨み付けている。
自分のことなのに私は彼のように怒りを前に出せない。
クジャとの因縁があるジタンと、狙われてもクジャを憎めない私と………今考えるのはやめよう。


「やれやれ、聞き分けがないわね。
さっきのようには逃げられないわ。素直に返した方が身のためよ。
さ、おとなしく出すもの出してちょうだい」

「さっきの罠はあんたが仕掛けたのか」

「言っときますけど、それを取り返すのがガーネット姫の安全より優先されるの。
ガーネット姫を無事に連れ戻せとは聞いてないわ」

「私の身の危険はOKってこと?」


ああ、私はいいのね。と視線で訴えると、アンタは無事でよかったわーなどと笑われた。
まさか命の危機を笑われる日が来ようとは………


「お母さまがそんな命令するなんて………」

「ゴチャゴチャ言ってんじゃないわよ!
さぁ、とっとと出しな!それともここでくたばりたいの?」

「おもしろい。嫌だと言ったらどうする?」

「バカね、決まってるでしょ!
ペンダントと女を渡して楽になりなさい!」


全員一斉に武器を構えた。
ジタンが素早い攻撃を繰り出し、ビビの詠唱が間入れず発動、クイナが追撃をする。相手の反撃を受けても、ダガーの白魔法がすぐにフォローをしてくれた。
私は相手が体勢を整える前にもらえる物を端から頂戴して、物理でラニの隙を狙い続けた。


「私ひとりじゃキツいわねぇ。今回は手を引いてあげるわ!!
………ああ〜、そうそう。アンタに伝言があったんだわ。
『帰り道は僕が知っている』
なに?アンタ迷子なわけ?まあ、いいわ。ちゃんと伝えたわよ!」


伝言と言われた台詞を吐き捨てるように去っていくラニの後ろ姿を私は眺めるしかなかった。


(迷子て…………!!!)


みんなの視線が痛い。
どういう意味だろうと言葉を探すジタンとダガーに感謝した。よくこんな素性の知れない女と旅をしてくれているもんだ。


「私の帰るところは私が決める。だからクジャの誘いに乗るつもりはないわ」


情報は探るけどね!と付け加えて笑ってみせた。
クジャのせいでそろそろ出身地も隠し通せないだろう。この先ダガーの過去を知る場面もあるし、もう限界かもしれないと何となく感じた。


(私の行く末も“予知夢”でわかったらいいのに)









「………この光は、“霧”が晴れてるのか?」


遺跡の中を進んでようやく抜けた先は、空と太陽がよく見える霧のない外側の大陸だった。


back/save