■ジタンside
おっさんーーーラムウとの会話は、ツカサには話さなかった。
クジャの手からツカサを助けたのも俺じゃない。彼女自身だった。
突然光が溢れだしたと思ったら召喚魔法で、それを見たクジャは嬉しそうに帰っていったのだ。
その後ツカサに召喚されたというラムウに問い詰めても、詳しくは話してくれなかった。
それは誰に配慮して口を閉ざしたのかはわからない。
ただ1つ「この娘はこれからも狙われる」とだけ言った。
その後目覚めたツカサとラムウの会話を俺は黙って見ていた。
ラムウを召喚したことは彼女本人も知らないらしい。
それから、それから………初めてツカサの涙を見たんだ。
もう一緒に旅を始めて大分経つのに、まだ彼女との距離は縮まらないと思っていた。
「話せないことは話さなくていい。全て1人で抱えなくていい。ツカサが呼ぶなら俺は必ず助けに行く。
だから………黙って俺の目の前から消えるのだけはもうやめてくれ」
クジャに連れていかれそうになったツカサを見て、どうして俺を呼んでくれないんだって思った。
言葉にして俺の名を呼んでくれればそれでいいのに。
ツカサの瞳から零れた涙はキラキラと輝いて地に落ちる。
その姿がとても美しくて掛ける言葉が見付からない。
だけど彼女はまだ頬を伝う涙を拭って、いつもの目で俺を見た。
(またその目、か………)
ツカサは知らないだろうけど、俺はその目が嫌いだった。
いや、嫌いだったんじゃない。怖かったんだ。
その真っ直ぐな目で俺を見る時、ツカサは必ず強い意思で動き始める。
俺に頼るどころか、相談すらしないで。
ほら、今もそうなんだろ?
「今の私が、その優しさに応えられるかわからない。
でも私はみんなと向き合うべきなんだろうし、もしかしたらクジャとも向き合わなくてはいけないかもしれない」
言わないでくれ。
「その後はきっと、きっと………世界と向き合わなければいけない日が来るような気がするの」
やめてくれ。
本当はわかってるんだ。
「だからね、ジタン。もしその日が訪れたら………」
それがツカサの決めた運命だってことくらい。
「どうか私を信じないでください」
その運命に俺がいないってことくらいわかってるんだ。
それから城に戻るまで何も話さなかった。
女の子となら話すことなんて得意なはずなのに、今は居心地が悪い。
(どうしたらツカサのためになるんだろうな)
(
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