昨日普通に眠りについたはず………なのに。
(お城!あれは………アレクサンドリア!?)
目の前に広がるのは広大な草原。
その先に見えるとても大きな建物。
あれは確かに見覚えがあった。
もう何年も前に発売されたFF9。
その後も懐かしんでは度々プレイをしていたため、すぐにわかった。
(リアル過ぎる………
まあ、すごくいい夢だと思って行ってみようかな)
滅多にないことだろうし、だなんて軽い気持ちで目の前のアレクサンドリアを目指して歩き出した。
私にはまだわかっていなかったんだ。
事の重大さが。
「おっき〜〜〜!」
アレクサンドリアの街に着いて第一声、ため息にも似た感動の籠った一言になった。
周りを見渡せば亜人や人間が共存していて、まるでテーマパークにいるような気分になる。
キョロキョロしながら城までの長い1本道を歩いた。
(この道もカバオくんに悩まされたな………)
懐かしさに浸っていると、周りからワァーっと歓声が起こる。
周りを見渡せば亜人も貴族も空に向かって手を振っていた。
段々と大きな影が伸びてくるのと同時に私の心も高まるのを感じた。
(わぁっ………!劇場艇プリマビスタ!!)
それならタンタラスのお芝居見たかったな〜と再び歩き出せば、チケットブースに見慣れた後ろ姿を見つけた。
とんがり帽子を被っていて、青いコートを着ている。
(あれは黒魔道士のビビ?まさか物語までちゃんとしてるの………?)
どうせ夢なんだし!なんて相変わらず軽い気持ちでいた私は、「折角だから」と持ってもいないチケットが偽物だったという嘘で声を掛けた。
「ねぇ、君も劇場観に来たの?」
「え………うん。お姉ちゃんも?」
「そうなの。
でもチケットがパチモンだったみたいで。ショックだわ」
「(パチモン?)ボクのチケットも偽物だったみたいなんだ」
しょぼんとしていてもビビは可愛い。
頭をよしよししそうになるところを抑えて、折角来たのにね!と話しながら何気なく裏通りに入っていく。
「おいっ、おまえっ!さっき、持ってたチケットがニセモノだって言われてただろ!」
振り返ると小さなネズミの子が仁王立ちをしている。
突然やって来たにも関わらず、家来になることを条件に今日のお芝居を見せてくれることになった。
(何か成り行きで私も家来になってしまった………)
ネズミの子は素早い動きで裏路地を抜け、鐘のある搭まで走っていってしまった。
急いでビビと一緒にネズミの子を追いかけると、鐘に続く長い梯子の前で「梯子を上れ!」と指示される。
ビビが梯子に手をかけると、上からモーグリが落ちてきた。
(あ、モフモフ………)
まるでぬいぐるみのように可愛い。
モーグリが何度も何度も謝っていると、旅人のスティルツキンがお別れの挨拶に来たのでそのまま2人のやり取りを見守った。
(癒される………!!)
もう少し癒されていたかったが、梯子の上で急かす声が聞こえる。
スティルツキンにお別れを言って、長い梯子を上った。
「これ、結構高い………ね」
ビビも気合いを入れて帽子を深く被り直す。
いよいよ城に潜入するようだ。
(やっぱり屋根の………上か………)
ビビも頑張って行くのだから自分もやらないと!と、屋根と屋根の間にかかっている細い木の板を慎重に渡って行く。
「ところでよ!
おまえたちの名前、まだ聞いてなかったよな?」
「ボクはビビ」
「ツカサ」
「どっちもちょっと変わった名前だな………おれは、パックってゆうんだ。これからもヨロシクなっ!」
「お姉ちゃんツカサっていうんだね」
「なんだ、おまえたち知り合いじゃなかったのか?」
さっき会ったばかりだという話をしたら、どっちも偽物掴まされるなんて運悪いな!と言われてしまった。
その後もパックは慣れたように梯子をどんどん先に行ってはかけていってくれた。
「この壁を越えればもう城の中だ!」
「よかった〜!」
緊張から解放されて思わず安堵の声が出る。タンタラスのお芝居のために頑張ったと言っても過言ではない。
ビビも私も益々お芝居が楽しみになった。
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