レッドローズ





■ジタンside





ブルメシアを出てクレイラに向かった俺たちはツカサたちを見付けられないままでいた。
ブルメシアでの会話の通り、ブラネ女王はクレイラに侵略してきた。どうやらクレイラにある“宝珠”を狙っているらしい。

クレイラの民を助けている時にフラットレイ………フライヤの恋人に会った。いい再会だとは言い難いけれど、フライヤは前に進もうとしている。



そして俺たちは再びアレクサンドリアの女将軍ベアトリクスと戦うことになった。








「宝珠は私があずからせてもらいます!
ざれ言もここまでです!」


またもベアトリクスに負けた。
3人でかかっても倒せないなんて………俺は歯をくいしばった。


「黒魔道士たちよ、用は済みました。
引き上げる準備に取りかかりなさい!」


どこからともなく現れた黒魔道士たちが空に手をかざして何かの魔法を唱えると、虹色の球体が出現した。
その球体にベアトリクスと黒魔道士は飛び込み、空高く飛んでいってしまった。


「おいっ、消えちまったぜ!どうする、フライヤ?」

「うむむ………ジタン!後ろに気をつけるのじゃ!」


振り返るとまた黒魔道士近付いてくる。しかし攻撃することはなく、手をかざして球体を出していた。
もしかして………と思った俺はビビたちに叫ぶ。


「しめたっ、ついて行くぞ!
おまえたちも、すぐ来いよ!」


ベアトリクスが飛び込んだのだから危険なはずはない。どんどん空高く昇る球体から離れるクレイラを眺めた。見上げると艇が見えた。
その時、空に向かって一筋の光が飛空艇から発射された。

空から現れたのは馬に乗ったシルエットの人物。
その人物が剣を投げるとクレイラが跡形もなく消え去ったのだった。


「おいっ、見たか!?」

「クレイラが………パックが………みんな無くなっちゃったよ………」


飛空艇に無事に降り立ったのに現実は悲惨なものだった。
俺はフライヤにもビビにもかける言葉が出てこなかった。


「そうだっ!ベアトリクスは!?
あいつもこの船に乗ってるんじゃないのか!」


近くの階段を上って船の中の様子を伺う。人影が見えたため、手招きで2人を呼ぶ。
しかし先ほどの光景にショックを受けたフライヤは動けないでいた。


「人影が見えるんだ!こっちへ来て隠れよう!」


階段下に隠れると丁度部屋の扉が開いた。
出てきたのはベアトリクス。
アレクサンドリア兵と会話をしている。これからブラネ女王のところに行くという。


「なぜブラネ様はクレイラを街ごと消滅させる必要があったのだ………
なぜブラネ様は召喚獣や黒魔道士なぞを使われる………
私は、このようなことのために技を磨いてきたわけではなかったはずなのに………」

「黒魔道士ども、こっちへ来なさい!
おまえたち3体はテレポットを使って先にアレクサンドリアへ戻り、城の防備にあたるのです。」


ベアトリクスの後ろを通ってポットに向かう黒魔道士たち。
俺たちは息を潜めた。


「私は、あのような心を持たぬ者たちと同じ働きしかできないのか………
これでは行方をくらましたスタイナーのほうがいくらかましではないのだろうか………」


そのままベアトリクスは船の中に消えていった。
あの冷血と言われた人物でさえ疑問を持ち、迷っていたのだ。
ブラネもこの船に乗っていることがわかった俺たちは、この船を調べることにした。

ベアトリクスの消えた方に向かうと扉が1つ。
中を覗いても薄暗くてよく見えない。


「ベアトリクス将軍!!」

「あの声は!!」


ブラネの声だ。大笑いしている声がよく響く。
クレイラから奪った宝珠を手にしているのだろう。


「ベアトリクス将軍よ!はやく、あとひとつの宝珠を見つけ出すのじゃ!」

「………分かりました。
ところでブラネ様、ガーネット姫のお体のほうは大丈夫ですか?」


(………ガーネット!!アレクサンドリアにいるのか!?)


「ガーネットの体からすべての召喚獣を抜き出した後はあの小娘は、もはや用無しになるな!」

「ブラネ様、それはどういうことですか?」

「ガーネットは宝珠を盗み出した罪で処刑する!!」


俺は耳を疑った。
ブラネがダガーを処刑する?親子なのに?
あんなにもダガーはたったひとりの母親に必死になっているのに、この母親は娘を殺そうとしている。
それにダガーがいるということは、もしかしたら一緒にいるかもしれないツカサも処刑されるかもしれない。


(そんなバカなことがあってたまるか………!!)


「このレッドローズがアレクサンドリアに到着したら、ただちにガーネットは処刑すると申したのじゃ!
おまえは、はやくもうひとつの宝珠のありかを探し出せ!!」


そしてまたブラネの笑い声が響いた。
ブラネを叩きのめそうとしたけど、この場で争っても救えないとフライヤに止められる。


「そうだ!なんとかして、ブラネよりも先にアレクサンドリアに戻らなきゃ!でも、どうしたら………くそっ!ツカサたちが!!」


3人で懸命に考える。
ここは船の上。空を飛んでいる………


「そうだジタン、あれを使えば!」

「待たぬか、ビビ。いったいどうしたというのじゃ!?」


突然走り出したビビをフライヤが追いかける。
俺もすぐに追いかけようと踏み出した時、船尾の方の空に眩い光が現れた。
それはキラキラと輝くような、月より美しい力強い光。


(あれは………ツカサなのか?)


何の根拠もなかったけれど、何となくツカサだと思った。
光の奥から何かが落ちてくるものが見える。


「ツカサ!ツカサなのか!?」

「………!………………!!」

「ツカサ!つかまれ!!」


できるだけ手を伸ばして落ちてくる人物を待ち構える。
間違いない。落ちてくる人物はあれだけ探していたツカサだった。


「………ジタン!!」


泣きそうな顔をしたツカサが手を伸ばして俺の胸へ飛び込んできた。
もう何日も聞けなかった声。温もり。
会ったら謝ろうって決めていたのに、胸がいっぱいになって言葉が出てこない。


「ジタン………ごめんね、ジタン」

「もういい。もういいんだ………無事ならそれで。
おかえり、ツカサ」

「ただいま、ジタン………!」


変わらぬ笑顔でただいまと言う姿を愛しく感じた。
強く強く抱き締める。


「受け止めてくれてありがとう」

「当たり前だろ。いつだって俺はツカサを守りたいんだ」

「ふふっ、すごい殺し文句だね。」


冗談ではなかったのだけれど………どうやらいつもの冗談に受け取られてしまったらしい。
でも今回はそれでもよかった。無事で本当によかった。


「………あ!そうだ、ジタン!急がなきゃじゃないの!?ダガーが危ないんでしょ!?」

「何でそのことを………」


何で知ってるのか聞こうとしたけれど今はそんな場合じゃないと思い、ビビの走っていった方へ2人で走向かう。
ビビとフライヤはテレポットの前にいた。


「お姉ちゃん!」

「おぬし………ツカサではないか!?」

「ただいま!でも感動の再会は後だよ!
ビビ、このテレポット使うんだよね?」

「え、あ、うん。さっき兵士がテレポットを使ってアレクサンドリアに戻るとか言ってたよね?」


このテレポットを使えばきっとアレクサンドリアに行けるはずだと言う。


「よしっ、こいつの中に入ってみるか!
ツカサは俺と一緒に行くぞ」


返事をする前にツカサを抱えてテレポットの中に入った。


「みんな、念じるんだ!」





そして俺たち4人はアレクサンドリアに向けて飛び立った。







みんなでダガーを助けに行く。

誰ひとり欠けるわけにはいかないんだ。

心配だからって離れたのに、結局支えられていたのは俺だったんだってようやく気付いた。






俺は仲間の故郷を助けたいって言ったツカサを守りたい。






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