列車





■ダガーside



「山頂の駅〜、山頂の駅〜!!」


アレクサンドリアに向かうための列車の中にダガーとスタイナーはいた。


「どうもありがとうございました」


列車を降りると車掌さんが次の列車の時間とか、休憩所があることとか色々教えてくれた。


「ひ、姫さま………
アレクサンドリア領であります!とうとうここまで帰ってきたのであります!」

「え………!?帰って来たんだ………
でも………お城が見えたわけじゃないのね」

「それは姫さまにおかれましてはアレクサンドリアと言えば城のことかもしれませんが………」

「あ………今、世間知らずと思ってバカにしたでしょ………」


奥にある休憩所で次の列車を待ちつつ、情報収集することにした。


「アレクサンドリア方面行きの方はもうしばらくお待ちくださいませ。

リンドブルム方面への鉄馬車が出発したようですね」


案内係りの人に声を掛けると、乗ってきた列車がリンドブルムに戻っていったという。
すると駅の方から聞き覚えのある声が聞こえた。
休憩所を出ると、反対側に知っている後ろ姿が2つ。休憩所に入っていった。


(あれはタンタラスの………!)


「おのれ悪党!!
しょうこりもなく、また姫さまの誘拐を企てるか!」

「誰ずら?
このブリキのおもちゃみたいなのは」

「ええい、忘れたとは言わせぬぞ!」


スタイナーの大声が聞こえる。
あの頃と変わらないシナとマーカスの後ろ姿が見えた。


「あなた、マーカスよね?
こんなところで何をしてるの?」

「お姫さまじゃないっスか!?
何をしてるって、それはこっちのセリフっス」

「へ………こんりゃたまげたずら!
お姫さまがこんなところにいるずら!」

「姫さま!このようなゴロツキと話してはなりませんぞ!」


あれからタンタラスがどうなったのか気になっていた。きっとジタンも気になっているに違いない。
懐かしさもあり、聞きたいことも色々あった。


「姫さまこのような………」

「スタイナー!!いいかげんにしなさい!!
わたしは再会した知人と話もさせてもらえないのかしら!?」

「怒られてるずら」

「騎士の名が泣くっス」


項垂れているスタイナーを見て少し言い過ぎたかしら………と思ったものの、案内係のアレクサンドリア方面行き到着のアナウンスにハッとした。
シナとマーカスは先にホームへ向かっていった。どうやらマーカスもアレクサンドリア方面のトレノに行くらしい。


「それでは気を付けて行って来いずら」

「わかったっス。
必ず兄キを助けて来るっス!」

「………アニキ?
ねえ、マーカスは、何のためにトレノに?」

「お姫さまもトレノに行くずら?マーカスはトレノでひと仕事あるずら」


詳しく聞こうと思ったが、車掌さんに声を掛けられたため急いで乗車した。
車内はとても空いている。奥の席にマーカスが座っていた。


「ねえ………どうしてマーカスはトレノに?」

「兄キを助けるためっス」

「アニキって?」

「俺が兄キって呼ぶのはブランクの兄キだけっス!
………石になった兄キを助けるため、俺たちはあちこち情報を集めたっス。
そして、トレノに白金の針という、どんな石化も治すアイテムがあることを知ったっス」

「そうだったの………」


まだみんな見知った仲ではなかったけれど、ジタンが完全に石化した森の入り口を悔しそうな顔で拳を叩きつける姿を私は鮮明に覚えていた。
ツカサもあの時はずっと森の入り口から離れなかったけれど、ブランクの話をする時はとても嬉しそうな顔をしていた。


「それじゃ今度は俺が聞く番っス。
ジタンさんはどうしたっス?」

「リンドブルムでわかれたわ………」

「ずいぶんあっさりしたもんスね。
用が済んだらハイさようならっスか?」

「そんな言い方はないでしょ!?
ジタンやみんなが、わたしのこと子供あつかいするから!

………しらないわ、あんな人!!」

「そうっスか………それじゃ、俺も何もしらないっス。
ツカサさんはどうしたっス?」

「マーカスもツカサと知り合いなの?
ツカサともリンドブルムでわかれたわ………ツカサはわたしを子供あつかいしたわけじゃないの。でも………だからこそ優しいツカサを危険なところに連れていきたくなかった。

きっとツカサなら別行動をしようとしていたわたしについてきてくれたはずだから………」


リンドブルムでのことを思い出しながら話していると、何かの引っ掛かりを感じる。
この引っ掛かりは何だろうと考えるものの、続いていく会話によって流れてしまった。


「俺自身ツカサさんとはそんなに会話はしてないっス。
でもジタンさんたちを追い掛けようとした兄キが、かなりツカサさんを心配してたんっス」


ツカサがタンタラスにも好かれていたことがよくわかる。
だって私たちもツカサのことがとても好きなのだから。


「ねえ、マーカス………その………
わたしにも手伝わせてもらえないかしら?」

「何をっスか?」

「わたしにも責任があったわけだし………
その………白金の針を手にいれるのを………」

「そんなの必要ないっスよ………
俺たちだけで十分っス」

「でも人数は多い方が………」





ガタンッッッ!!!!!





突然列車が大きな音を立てて停車した。
車掌さんが故障かもしれないと外に出ていったが、すぐに悲鳴が聞こえる。


「オバケです!とんがり帽子のオバケが線路にとび出して来て………」

「とんがり帽子!!」


スタイナーの方を向けば、強い眼差しでこちらを見ている。
お互いに頷いて列車を飛び出した。


「何があったっスか!?」


マーカスも追いかけて来てくれた。
目の前にはボロボロの黒のワルツがよろめきながら列車の影から出てきた。
何かをずっとブツブツ言っている。


「あれは………たしか、カーゴシップで現れた………」

「おのれバケモノ!今度こそ剣のサビにしてくれるわ!」

「まって、スタイナー!
ねえ!あなたに聞きたいことがあるの!いったい何のためにわたしを………?」

「もうムダっス!何を言っても通じないっス!!」


徐々に近付いてきたワルツ3号が襲い掛かってくる。

わたしたちはすぐに戦闘体制をとった。







back/save