狩猟祭





■ツカサside



次の日、全員お城の客室に集まっていた。
みんなが狩猟祭に出場するイベントだ。


(ジタンはちゃんとダガーをデートに誘えたかなー?私は出場しないから応援頑張らなきゃ)


「わっりぃ、わりぃ!ちょっと準備をしててさ」


急いで部屋に入ってきたジタンを確認し、兵士がルール説明を始めた。


「『望みの品』はもうお決まりですか?」

「ああ、俺はやっぱギルだぜ!」

「私はアクセサリにしようか」

「ビビ選手とツカサ選手は何にしますか?」

「え、えっ!ボクも出るの!?」
「私も!?なんで!?」

「おまえらならイイ線行くと思って俺がエントリーしといてやったんだ。ツカサも十分に戦えるはずだぜ。
魔法があればどうってことないって、なっ?」


まさか私までエントリーされているとは思わなかった。
戦う練習になるから!とジタンは言うがあのザグナルを思い浮かべただけで鳥肌が立つ。


「(雑魚だけ倒していよう………)じゃあ私もギルで」


優勝は狙っていないため、無難にギルにしておく。
ボス敵はジタンとフライヤに任せておこう。


「ジタン選手とツカサ選手は劇場街、フライヤ選手は工場区、ビビ選手は商業区へ向かってください」

「じゃ、みんなまた後でな!」


それだけ言うと、すぐに各々のスタート地点へと向かった。


「なぁ、ツカサ。もしこれで俺が優勝したら………デートしないか?」

「何言ってるの。もう始まるよ」

「もし、だよ!もし!いいだろ?お祝いってことで!」

「はぁ………ダガーとはどうするの?」

「ダガー?何でそこでダガーが出てくるんだ?」


そこでようやくこれまでの違和感をハッキリ感じてきた。
ジタンのお決まりの台詞が全て無くなっているか、私に向けられていることに気付く。


「あ、劇場街に着いちまったな。じゃ、デートの約束忘れるなよ!」

「え、ちょっと!………これはマズイかも」


考える間もなく、狩猟祭が始まったのだった。


劇場街と工場区の雑魚を倒せるだけ倒す。
別れてからジタンの姿は見えない。どうやら行き違いか、まだ行ってない商業区に行ったようだった。


「デートを無しにするには私がザグナル倒しちゃう?いや、それは自分を過信しすぎだよな………」


そうは思いつつ、やっぱり様子が気になった私は商業区へ向かった。


「ジタン、助太刀いたす!」

「とどめは俺にささせろよ!デートがかかってるんだからな!」

「フフッ………あきれた奴じゃな。好きにしろ」


奥から大きな音が聞こえる。これからザグナル戦のようだった。
物陰からその様子を見ていたけれどやはり少し苦戦しているようで、強力なしゃくりあげでジタンもフライヤも吹っ飛ばされる。


「………っケアル!」

「ツカサ!?」

「回復担当してあげる!」


私の言葉にジタンはニッと笑って走っていく。
もうすぐタイムアップになってしまいそうだった。


「ジタン、時間切れになっちゃうよ!総攻撃する!?」

「いや………これで終わりだっ!」


空高く舞い、凄まじいスピードで敵を斬りつけてタイムアップのアナウンスが流れる。
ズゥンンン………と地響きかと思うくらい揺れ、目の前のザグナルは倒れてピクリとも動かなくなった。


「タイムアップ!終了で〜す!
優勝は………ジタン選手!見事優勝です!」


どうやらギリギリ間に合ったらしい。高得点を出し、ジタンが優勝した。


「わぁ!おめでとう、優勝だって!」

「間に合ってよかったぜ………これでデートは決まり、な?
助太刀ありがとよ、フライヤ!」

「!!」


結局ザグナルのとどめは自分でやるべきだった………と今更思ったけれどもう遅い。
その後私たちはお城に戻り、ジタンは称号と優勝賞品を受け取った。


「わあ、すごいや、ジタン!」

「おまえも強かったぜ!」


大きな拍手で包まれる中、部屋の外から騒々しい音と弱々しい声が聞こえた。


「シド大公………ご無礼をお許しください………!
我が王から………火急のことづてでございます」






ここでもまた迫られる選択肢に、私も悩み始めるのだった。




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