ダリ 2





まずは一通り村を回ってみて、怪しかったところはどこだったか話し合い始めた。


「怪しかったのは………村長の家とその隣の機械が動いてる建物だな。
村長は俺を見てすぐに追い出したし、その隣の家には見張りがどうとか………って言ってる男がいた」

「間違いなくその建物だろうね。私も見たけど、奥には特殊な鍵じゃないと開かない扉があったよ」


まずはそこに行ってみようということになった。
もしまた追い出されたり見張りが居たとしたら、次は侵入する方法を考えるつもりだった。


(恐らく見張りはいないと思うんだけど………)


案の定、機械が動いていた建物のハッチのような物の前に見張りはいなかった。
蓋を開けると冷たい嫌な感じの空気が流れ出てくる。
私たちは目を見合わせて頷くと、順々に下り始めた。

地下道を進むとそこにいたのは1羽のチョコボだけだった。


「どうしたの?」

「「しぃ〜っ!」」


近くに人の気配を感じた私たちはダガーの言葉を遮る。
小部屋の中から聞こえる話し声からすると、男が2人いるようだ。
しばらくすると足音が聞こえて、出てきたのは男2人とビビだった。
少しだけ見えたビビの悲しい瞳に、私は怒りにも似た感情が沸き起こってくる。
飛び出そうとしたジタンを私は止めるつもりはなかった………が、ダガーがジタンの襟元を引っ張って後退していく。


「どうしたの?ダガー」

「そばに大きな樽があったでしょう?あれと同じ模様の樽を城で見たことがあります。
きっとここは、アレクサンドリアと何か関係があるのです」


それを解明したい、ということで騒ぎを起こさないように言われる。


「………わかった。でも、ビビに危険が及ぶようなら私は騒ぎを起こしてでも助ける。
ジタンも同意見でしょ?」

「ああ。ダガー、それでいいかい?」


はい、と返事をするダガーを見て、急いで奥に進む。
その途中、人が入れるほど大きな箱を見た。それを見た瞬間から私自身、この奥に行くのが少し怖くなった。


(大丈夫、ビビなら。ビビの強さはみんなも私も知ってるから………!)


更に奥に進めば大型機械が忙しなく動いていた。何か丸いタマゴのような物が流れていく。
うるさい機械の雑音の中、小さく泣き声が聞こえた。


「………ビビ?」

「ジタン!?」

「ビビ、よく頑張ったね!今、出してあげるから!!………こんな箱っ!!」

「ま、待ってツカサ!そんな開け方したらビビが危ないわ!!」


みんなも手伝ってくれ、無事にビビを救出する。
私は思わずギュッと抱き締めた。


「怖かったね、ツラかったね………よく頑張ったよ、ビビ」


どうしてこんなことになったのか聞けば、ジタンと別れた後、男の人に無理矢理連れてこられたという。


(男の人ってさっきのヤツ?それとも宿屋のヤツ?どっちにしても許せない………!!)


「いいか、ビビ。これからは黙ってちゃダメだ。
そうだな………いざというときは自分から大声を出してみるんだ」

「自分から………?」

「ああ、たとえば………」

「「いいかげんにしろよなコノヤローッ!!」」

「きゃっ、ツカサ!?(こ、コノヤロー?)」

「そうそう!女の子のツカサでもこれだけ勢いと大声が出せるんだ。
相手を脅かすだけじゃない。勇気もでてくるぜ!ビビなら出来るだろ?」

「勇………気」

「そうだよ、ビビ。まずは自分の身を守るために勇気を出してみて?
それができるようになったら、きっとこれからビビが大切だと思う人を守るために勇気が出せるようになると思うの。あの時ホントは守れたのに勇気が出なくて守れなかった………なんて思いを、私はビビにしてほしくないよ」


きちんと目と目を合わせて語りかけるように言うと、考え込むかのように俯いてしまった。
でもきっとこれでいい。まず考えることが大事なのだと思う。


そしてこの奥を調べたいというジタンの申し出にビビも賛同した。
本当は私だって見たくない。でもみんながこの真実に向き合うのなら………画面越しではないリアルな光景をきちんと見ようと覚悟を決めた。







「この扉、何か煙っぽいの出てるね」

「………煙じゃない。これは“霧”だ………!!」


ジタンの合図で扉を勢いよく開ける。
そこから出てきたのは“霧”のモンスターだった。
“霧”が充満した部屋にも大型機械が置いてあった。かなりの勢いで“霧”を吸っている。


「“霧”を吸い込んでさっきの機械に………送ってるのか?じゃあ、あのタマゴみたいなものは………??」

「………進もう。この規模からして、きっともうすぐ最深部に着くんじゃないかな」


そう言って無意識に私はビビの手を握っていたのだった。







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