氷の洞窟




「あっ、あの………氷の洞窟って知ってる?」

「ここがそうなのか?」

「わたくしも聞いたことがあります。氷におおわれた美しい場所だそうですね」

「ボクもおじいちゃんから聞いただけなんだけど………ここは“霧”の下から上まで続いてる洞窟なんだって」


そんな話を聞いて上を向けば、“霧”よりも高く続いていて気が遠くなりそうだった。


(霧で見えないけど、これってかなり過酷な洞窟を登らないといけないんじゃ………!!)


「ま、とにかく行ってみるしかねえな………」


(私ビックリするくらい末端冷え性なんだけど大丈夫かなー………)


日本に四季があるから寒いのも堪えられると思ったが、もう既に入り口で肌寒い。
立ち止まっていても仕方ないため、みんなに続いて洞窟に入った。


(さっむ………)







「この壁、何か怪しいなぁ………何かありそうなんだけど………
ツカサ!練習ついでに魔法をこの壁にぶっ放してみてくれよ」

「あ、はい!………ファイア!」


氷に覆われた壁はファイアによって崩れ、中から宝箱が現れた。


「やっぱりな!………他にもあるかもしれない。その時は頼むぜ、ツカサ!」

「わかりました。頑張ります!」


どうせやるなら宝箱は全部回収していくつもりだった。エリクサーなんて貴重な物をさらさら逃すつもりはない。
効率よく回収するには………とそればかりを考えていた。少しだけ余裕が出てくる。
練習をすれば魔法もなかなか面白いことがわかってきて、目に見えないMPを気にしながら先に進んだ。







「さすがにこうも長時間居ると寒いね。ビビ、大丈夫?(あれ?ここってまさか………)」

「う、うん………」


横に溝がある道に見覚えがあるなと思っていたら、ビビがフラフラと下へ落ちていった。


「ビビ!しっかり!」

「だ、大丈夫でありますか〜?」


心配して下を覗いたスタイナーもすごく大きな音を立てて落ちていった。
ジタンも様子を見に下りてスタイナーを蹴ってみたが、ビクともしない。



ドサッ………



隣にいるはずのガーネットを見れば、足元に倒れていた。
気付くのが遅れた焦りなのか、不安が入り交じる声でジタンを呼んでしまう。


「わ、罠かもしれません!どうしますか!?」

「そう、かもな………ちくしょう………俺まで眠くなってきちまった………逃げ、ろ、ツカサ………」


そのままジタンまで倒れ込んでしまう。
駆け寄って体を揺すっても、目が開くことはなかった。


(こんな時どうしたら………)


もし本当にゲーム通りなら、この先にボスがいるだろう。
しかし1人で倒せる自信はない。まだバトル初心者には難し過ぎる。
残された道はほとんど無く、可能な限りみんなの近くでファイアを灯し続けようと思っていた。
しかし、それもすぐに不可能になる。


(………あ、これはまずい。私も、眠く………)


魔法を唱える間もなく、私もジタンに覆い被さるような形で倒れ込んでしまったのだった。




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