霧の下の草原




目が覚めても私はまだこの世界にいた。


(どこからが夢でどこからが現実なのかわかんなくなりそう………)


もうみんなも出発の準備が出来ていて、森から出てきたモーグリとモグタローの話をしていた。
ガーネットと自己紹介も終わり、本当に旅が始まるんだなと鳥肌がたった。







これから氷の洞窟へ向かうにあたり、私は新たな悩みに直面していた。
今までの戦闘は石を投げていたが、恐らくこれから行くであろう氷の洞窟では石が落ちているとは思えない。

洞窟に着く前にどうにかしなければならないというわけだ。


「あ、あの!ガーネット姫!実は白魔法を教えていただきたいのですが………私でも使える魔法はありますか?」

「まぁ!でも魔法は向き不向きがありますから………まず装備の中から覚えられそうな物を探しましょう」


手当たり次第に装備品を物色していく。
みんなの装備も全部見せてもらった。


「どうですか?覚えられそうなものは一目でわかるようになっていると思いますが………」

「………うん。すっごくわかります、これ。
でも白魔法と黒魔法、両方覚えられるって普通無いですよね?」

「え!?お姉ちゃん両方できるの?」


私も含めてみんな驚いている。
特殊能力とかではない分、馴染みがある魔法でよかったなとは思った。


「そっか、いつまでも石ばっかり投げなきゃいけないのかと………
でも気になるのは、ジタンの持っている武器も少し覚えられそうなものが………」


そう言って、この部分なんだけど。と指を指せば、そのアビリティは“とんずら”だった。


「なるほどな。ツカサは延び白がいっぱいあるってことか」

「短剣の使い方勉強しようかな………ジタン、基礎だけでも教えてもらえますか?魔法はガーネット姫とビビ、お願いします」


深々と頭を下げてよろしくお願いしますと言えば、みんな笑って引き受けてくれた。
完全に覚えるまでは装備するだけで魔法も使えるため、試しに練習をしてみる。


「まずはケアルとファイアか………」

「コツを掴めばすぐ出来るようになりますわ」

「ツカサ殿も回復出来るとなると、戦いが凄くラクになりますな」

「短剣は実戦で教えるからよく見ておけよ」

「あっ!お姉ちゃん、力入れる方向そっちじゃ………」


え?と聞き返す前にファイアがジタンの尻尾を掠めて飛んでいく。


「ぅあっっっつ!!!!」

「え!?あ、ごめんなさい!大丈夫ですか!」


フーフーと気休め程度にしかならないが息を吹き掛けて冷ます。ビビにはブリザドをお願いし、持っていたハンカチに包んで尻尾を押さえた。


「でもこれなら基礎となる魔法は集中すれば全て出来そうですわね」

「基本的には後ろから石と魔法で援護しますね!」

「いや、石はもう………」

「まぁ!素晴らしいですわ!これで短剣も覚えたら接近戦も出来ますわね」

「いや、だから石はさ………」

「ツカサ殿の今後活躍が楽しみである!」

「………頑張れよ」


石を投げるのだってコントロールが必要だし、何より最後にブランクが教えてくれたことだったから私は今後もたまには使っていきたかった。


「うん!ありがとうございます、ジタン」


こうして私の練習にみんなが付き合ってくれながらの、氷の洞窟を目指す旅となった。







まだ始まったばかりの旅。


何が起こるかわかっている旅。


そう思っていたのは私だけだったんだ。




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