そして一晩





森の中にいる時はわからなかったが、辺りはもう真っ暗だった。
星も月明かりも霧のせいでよく見えない。

ガーネットの体調を考慮し、その場で一晩過ごすことになった。

みんなが焚き火を囲んでいる中、私だけはまだ石になった森の前から離れられずにいた。


「ブランク………」


また会えるのは何日後なんだろう。
その日まで私はまだ夢の世界に居続けられるのだろうか。
色んなことがあって疲れてはいるが、寝てしまえば夢から覚めてしまうような気がして眠りたくなかった。


(今が夢の中なのに睡魔がくるなんて………
寝ないようにみんなのところへ戻ろう)


くるりと向けば、焚き火の前にはジタンしかいなかった。
ガーネットとビビはテントの中で先に眠ったらしい。


「お兄さんはどちらへ?」

「安全確保と散策だってさ」

「そうですか………
あの、先程は助けていただきありがとうございました。抱えてもらわなければ逃げ遅れていたと思います。
それから………ブランクのこと絶対助けましょう。どんなに時間がかかっても、必ず」

「何でそんなこと言えるんだ」

「何でって………」

「俺たちタンタラスはブランクが仲間だから助けるさ。でもツカサには関係のないことじゃないのか?
たった今、この数時間一緒だっただけの奴を何で………」


「いけませんか?」


真っ直ぐな目でジタンを見る。もしかしたら少し睨んでいたのかもしれない。
だって、
だって………


「誰かを助けるのに、理由がいりますか?」

「っ………!!!」


この言葉を教えてくれたのは他ならぬジタンだった。
ゲームのあのオープニングだけで私の心に残るには十分だったのだ。


「「………………」」


しばらく私たちは無言で睨むように見つめあう。


「ぷっ………あっはっは!」

「なっ!笑うとこじゃないです!!真剣だったのに!」


大笑いするジタンにからかわれたんだとわかり、少しムカッとする。


「いや〜、ツカサは思った以上だよ。俺と同じ考えを持ってるなんてな………
よし!ブランクは必ず助ける。同じ目的を持ったパーティが出来上がったじゃないか!」

「えっ、それってまるで旅が始まるみたいな………」

「はじまるんだよ。
そう、今この時から俺たちの旅が………ここからはじまるんだ!」









月明かりも通らない霧の下で、ジタンの笑顔はキラキラしていた。





側にいられる間は、あなたの笑顔を守りたいと思っていたよ。










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