走り出した車
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496 名前:496 投稿日:02/06/27 03:55
   走り出した車

 小学2年生の時、父の運転で私達は、ピクニックへ行きました。
 目的地は、草原の広がる水源地です。
 両親は目的地の近くで車を止め、「ちょっと待っててね」と言い、出て行きました。
 茸の様子を、見に行ったのです。
 その間、私と妹は車の中で、両親が戻ってくるのを待っていました。
 でも暇な私は、車に興味を持っていたので、運転席に移動したのです。
 そして私は、妹が止めるのも無視し、ハンドルを動かしてみました。
 すると、突然に車が動き出したのです。
 慌てた私は、何とか車を止めようとしました。
 でも幼い私には、車を止める術を知りません。
 そもそも体の小さかった私には、アクセルやブレーキに足が届かなかったと思います。
 妹は、恐怖のあまり悲鳴を上げていました。
 私は泣き叫びながら、ただ闇雲にハンドルを動かす事しか出来ません。
 その時、車の中に、両親の叫び声が聞こえたのです。
 振り向いて後ろを見ると、両親が必死に車を追いかけていました。
 しかし、なかなか車に追い付く事が出来ずにいます。
 その時、「シートベルトを締めなさい」と、誰かの声が聞こえました。
 そして、いつの間にか私は、シートベルトを締めていたのです。
 妹の座席からも、シートベルトを締める音が聞こえました。
 するとその時、急に車が止まったのです。
 まるで、誰かが急ブレーキをかけてくれたかのように・・・。
 「そう言えば、あの時の声って、お婆ちゃんの声だよね」
 車が止まった後、妹が私にそう呟きました。
 しばらくすると、父が車に追い付き「よかった」と言いながら、私達の無事を喜んでいます。
 そんな父に、私はハンドルを動かした事を告げました。
 すると父は、不思議そうな顔をして、こう言うのです。
 「エンジンも動いていない車が、なぜ走り出したんだろう」
 「坂道でもないのに・・・」
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