タコ
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299 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/05/28(月) 13:00
野生生物板から転載


1 名前:朔太郎 投稿日:2001/05/27(日) 22:50 ID:nWz3hOzk
萩原朔太郎という詩人の作品の中で「死なないタコ」というものがあります。
これは飢餓状態のタコが自分の足を食べ、内蔵を食べ、最後は体が全部
なくなっちゃうんですが、そのタコはそこに永遠に生き続ける・・・
という話です。
そこで皆さんに質問ですがなぜそのタコは自分の体が消滅するまで自分の
体を食べる事が出来たのだと思いますか??
また、最後まで残っていたのは体のどの部分なんでしょうか??


2 名前:死んだ蛸 投稿日:2001/05/28(月) 11:35 ID:OPgJPf4Q
死なない蛸

或る水族館の水槽で、ひさしい間、飢ゑた蛸が飼はれてゐた。地下の薄暗い岩の影で、青
ざめた玻璃天井の光線が、いつも悲しげに漂つてゐた。
だれも人人は、その薄暗い水槽を忘れてゐた。もう久しい以前に、蛸は死んだと思はれて
ゐた。そして腐つた海水だけが、埃つぽい日ざしの中で、いつも硝子窓の槽にたまつてゐ
た。
けれども動物は死ななかつた。蛸は岩影にかくれて居たのだ。そして彼が目を覚ました時、
不幸な、忘れられた槽の中で、幾日も幾日も、おそろしい飢餓を忍ばねばならなかつた。
どこにも餌がなく、食物が全く尽きてしまつた時、彼は自分の足をもいで食つた。まづそ
の一本を。それから次の一本を。それから、最後に、それがすつかりおしまひになつた時、
今度は胴を裏がへして、内臓の一部を食ひはじめた。少しづつ他の一部から一部へと。順
順に。
かくして蛸は、彼の身体全体を食ひつくしてしまつた。外皮から、脳髄から、胃袋から。
どこもかしこも、すべて残る隈なく。完全に。
或る朝、ふと番人がそこに来た時、水槽の中は空つぽになつてゐた。曇つた埃つぽい硝子
の中で、藍色の透き通つた潮水と、なよなよした海草とが動いてゐた。そしてどこの岩の
隅隅にも、もはや生物の姿は見えなかつた。蛸は実際に、すつかり消滅してしまつたので
ある。
けれども蛸は死ななかつた。彼が消えてしまつた後ですらも、尚ほ且つ永遠にそこに生き
てゐた。古ぼけた、空つぽの、忘れられた水族館の槽の中で。永遠に――おそらくは幾世
紀の間を通じて――或る物すごい欠乏と不満をもつた、人の目に見えない動物が生きてゐ
た。

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