コインロッカー
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723 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/02/25(日) 15:42
199X年都内某所にて、ある女が赤ちゃんを産んだものの育てられず、
駅のコインロッカーに遺棄して死なせてしまうという痛ましい事件が発生した。
 警察の懸命の捜査も虚しく、遺棄した人物は特定できず、その女は平穏な生活
へ戻っていった...。
 それから数年後、その女はごく平凡なサラリーマンと結婚し、幸せな家庭を築いていた。
そして、結婚2年目のその身体には、新たなる生命が宿っていた。
 その女にとっては、2度目の妊娠であった。
 妊娠してみて、その女は初めて、以前捨てた子供のことに思いをはせた。
 「これから産もうとする子と比べ、なんて可哀相なことをしたのだろう...」
女は自責の念に駆られ、人知れず涙した。
 そしてその女は、「せめて花だけでも添えて供養したい」と思い、花を持参して赤ちゃん
を捨てたコインロッカーの所へ向かったのであった。
 あの日以来、決して足を向けることのなかったその駅は、数年の歳月を経て、その
雰囲気は大きく変わっていた。
 そのため、女は例のコインロッカーの場所がわからず、途方に暮れるのであった。
 交番や駅員、あるいは町行く人々に聞けばよいのだが、「後ろめたい事をしている」
という気持ちのせいか、それもできず、いたずらに時間だけが過ぎていった。


724 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/02/25(日) 15:43
身重の身体がきつくなってきた。その時、
「コインロッカーを捜してるの?」と、突然背後から声がした。
 振り向くと、そこには8歳ぐらいの色白の男の子がたっていた。
 女が「うん、そうなんだけど、場所がわからなくて...」と言うと、男の子は、
「僕、知ってるよ!こっちだよこっち」と言って、女の手を取り迷路のような構内を
走り始めた。
心身ともに疲れきっていた女は、その子供に引かれるまま、その後を着いていった。
 そして、女はあのコインロッカーの前に辿り着いた。
 そう、そこは確かにあの時のコインロッカーだった...。
 女は、安堵感から「フー」と一息ついた後、男の子に「ありがとう」と礼を言った。
 男の子は、ニコリともせず、ジーッっと女の顔を見ていた。
 その時になって初めて女は、いくつかの不審点に気がついた。
 この男の子は、どうして1人なのだろう?
 なんで、こんな迷路のような駅の構内を熟知しているのだろう?
 そして。どうしてこの子は、私がコインロッカーを捜していることがわかったのだろう?
 女は、恐る恐るその子にきいてみた。
 「僕、1人みたいだけど、ママとかは一緒じゃないの?」、
 すると男の子は、ようやく女から視線を外して、うつむき、小さな声で
「ママは...ママは... ママは...」と呪文のように唱えた後、再び女の方を向き、
「ママはお前だぁ〜」と叫んだのであった。
そして、翌日、無理矢理ロッカーに詰め込まれた女の死体が発見された。
そのロッカーの前には、女を供養するかのように「花」が添えられていた。
 その花が、女自身が持参したものであることは、誰も知らない...。
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