両耳にはヘッドホン。流れてくるのは最近のとか数年前に流行った曲とかばらばら。適当。初めて聴いたときは何か感じるものがあった。繰り返し聴いてるとただの音にしか思えない。歌詞とか意識して聴かないのが原因かもだけどさ。

だから好きって言われてもどこか他人事、誰に言ってんのかわかんない。よくある台詞の一部。
真っ赤に染まった耳たぶとか頬っぺたとか、絞り出した声とか。すべてがオレを煽ってきたのも、現実。

どっくどっくうっせー心臓。少なからず緊張してんのな、オレ。

高校生になって、ていうか生まれてきて初めて恋愛している気がする。帰りの電車の中、今日は左耳にしかイヤホンをしていない。右は隣に座る千鶴に貸した。
え、ひとりで聴くとかつまんない奴だね。って総司に言われた記憶はまだ新しい。だからって訳じゃないけど、じゃあ、まぁ。そんなかんじでイヤホンに変えた。聴く?試しに片方渡せばあまりに嬉しそうに笑うから、照れてそっぽを向いてしまった。あれは後悔したなぁ。それでも千鶴は、笑っていたんだ。

「なぁ、この歌好き?」

車内アナウンスと重なった。はっず。あー…その、とか、えっと、とかそんな言葉しか出てこない。千鶴こっち見てんじゃん。どうしよう。どうにもなんねぇけど。

「うん、好きだよ」

ピアノの独奏が響く。静かに静かに、消える。替わりに千鶴の声が残った。
オレもこの歌、好きになるかも。ううん、もうなった。もう好き。そう口にするのはやっぱ照れ臭いから、聞かれるまでは黙っとくけど。
狡いとか言うなよ。精一杯の強がり、かっこつけのつもりなんだからさ。






20100806

椎さんへ
付き合いたてほやほやな千鶴と平助があやふやに。
個人的にヘッドホンがナチュラルに似合う奴が好きだな、とか思って。
企画参加ありがとうございました!

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