パパパパン!!
「っ!?」
部室に入った瞬間発砲音のような音が耳から骨や脳に響く。
「ん〜…なんっかイマイチ」
「もっと派手なのがいいよなぁ。こう、バーン!みたいなさ」
「太股パーン!」
「い゛っ!?…てぇ!なにすんだよ総司!」
「えっ、パーンていうから」
「バーンだよ、バ!」
……うるさい。
薄く煙をあげるクラッカー片手にはしゃぐ馬鹿二人。片方は太股を抑え悶えつつも懸命に痛みを与えた相手に食ってかかっている。
対してもう片方は涼しい顔をして「やっぱり100均じゃたかが知れてる」とそこら辺に投げ捨てた。
「あーはじめくんだ」
投げたそれのひとつが転がった先に俺の靴。そこでやっと気づいたのか手をひらひら振ってきた。
何をしているんだ、部室で。
思わず長い溜め息を吐き出した。
まだ痛むのかベンチの上を転がっている平助。邪魔くさい。思わず蹴って床に落としてみれば背中の痛みが増えたらしく更に喧しくなった。
はじめくんにも茶目っ気があったんだね。と意味不明なことを言われた。
「そ、そうじ…」
「なに?」
「やっぱ本格的なクラッカーじゃないとショボくね?」
「うん。僕もそう思うよ」
赤や青のくるくるした紙を伸ばしながら先程のクラッカーについて語りだす。
やばい。そろそろ柔軟を始めないと顧問が来る。
そんなことなどお構い無しな馬鹿二人組はまだ話している。
「そうだ!何個か同時にやったらいいんじゃね!?」
「ああダメダメ。それやったら紐だけ抜けるから」
「マジ?え、てかやったのかよ」
「あれはいろいろとショックだった」
「じゃあボツだな」
「大きいのとか売ってなかったっけ?」
「あった気がするけど最近見ねぇな〜。まだ売ってんのかな」
「探すのだるいからボツ」
「旗とか出てくるやつとかあるよな」
「もっと派手なのがいい」
「じゃあクラッカーから離れてみようぜ」
「例えば?」
「うーん…」
考えているのか、平助が腕を組みうなっている。
…なんだこの会話は。
高校男児がやるような会話じゃない。やる気がない、だらだらし過ぎ。
そしてどこから出したのか伸び縮みするアレをくわえている馬鹿二人。二人ともがするとなかなかシュールな光景で、しかししっくりしているのも不思議だ。
ピーピー空気と紙が擦れる音。ひとつでもうるさいのに二重奏で更にうるさい。黙っているのに行動がうるさい。
あっ!と大声を出してうるさいアレが口から離れて落ちた。
「花火!」
「花火?」
「打ち上げとか派手だし綺麗じゃん!」
オレ天才!と自画自賛する平助。馬鹿と天才は紙一重らしいがこいつは紙が破れようが丸めようが馬鹿のままだと思うのは俺だけだろうか。
花火花火と騒ぐ平助。
「じゃあ買いに行こう」
「…今から?」
「うん」
うん。じゃないだろ。
流石に平助もこれには反対するだろうと思った。が、
「よっしゃ!行く!」
甘かった。だいたい何故、今、クラッカーから始まった会話が花火にたどり着き帰り支度をしているんだ。
「っていう訳ではじめくん、後のことはよろしく」
「よろしくない」
めでたい日なのに。
そう口を尖らせたのは平助だった。
Happy Birthday
Mio
「……そうか。で、クラッカーだったのか」
「そうだよ。納得?」
「……」
負けるな、俺。
2010/0709
どうやら花火をぶち上げることになったようです。
がんばれ!斎藤くん!←
と、いう訳で、澪姉さんお誕生日おめでとうございます(^ω^)
祝う+クラッカー=花火ということになってなんやかんやでこんなことになりました。
ささやかながら愛情といういっちょ前な名前をした事実迷惑がぎっしり詰まったコレを捧げたいと思います。ポイとごみ箱の中にでも収納してやっていただければ幸いです。