あぁ〜なんだったっけなぁこの曲。小学校の運動会で行進のときに流れてた記憶はあるんだけど。
これを聞くと頭に浮かぶフレーズはきっと共通してるはず。


「サル、ゴリラ、チンパンジー」


ほら、ね。やっぱりだよ。
僕の代わりに自分に(馬鹿)正直な平助が意気揚々に歌ってくれたからスッキリ。こういうとき、何をしても許される奴って羨ましい。少しだけ、だけど。


「ってああああ!ずっりぃ!総司アイス食ってる!」

「狡いって君…」


甘いバニラが挟まれたモナカをかじる僕を凝視する平助の眼は、これでもか、というくらい見開いている。
乾燥しそうだなぁとぼんやり心配しながら三分の一で割ったモナカを平助に差し出す。


「え?」

「どーせ財布忘れたんでしょ」

「馬鹿にすんな!あるっつーの」

「へぇ。で、中身は?」

「十円がよっつ、一円が……はっこ」

「駄目じゃん」


チラチラとまだ差し出されたままのモナカを見たり反らしたり。
なんだよ、人の親切心を。

思いっ切りたくしあげられた袖から伸びる腕は、ほんのり焼けていた。女子なんかは日焼け止め塗らなきゃって騒ぐんだろうな。でも日焼け止めって二時間置きに塗らなきゃ意味ないんだよ、知ってんのかな。まぁシミになろうがなんになろうが僕には関係ないことだけど。

さて、いい加減バニラがとけそうだから食べるか食べないかはっきりしてもらいたい。平助、さっきの元気はどうしたんだ。


「…まじで食っていいのか?」

「いいよ」

「じゃあ、いただきます」


しっかりと食事の挨拶をしてから、食べた。だんだん緩んでいく表情を見れば、やっぱり少しだけ、羨ましくなった。
ごちそうさま。満面の笑みで手を合わせて僕の前の席に座って、じっ、と眼を向けてきた。


「いいよなぁ、総司は」


またもや自分の思考にあった言葉のひとつを、平助が呟いた。
なにが?どうして?なんて聞く気にはなれなかった。


「僕は君が羨ましいよ」

「はぁあ?嘘だろ〜」

「ほんと」

「じゃあ趣味が悪いんだ」

「趣味はいい方だと思ってるつもりだけど?」

「……わっかんねえなぁ」


オレたち無い物ねだりばっかりじゃね?
椅子をガタガタ揺らしながら、またサルゴリラと歌い始めた。
音痴なんだから止めとけばって言おうとしたらバニラがとけて机に垂れていた。
甘ったるい。どうするんだよこれにおいつく?


「なにしてんだよー」


まったくだ。なにしてんだろう。


「うるさい、馬鹿助」


モナカを食べたからだろう、喉がカラカラだ。






2010/0609

五万フリー
モナカがうまかったんだ


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