かちかちかち、と土方さんが携帯をたどたどしい指遣いで操作する。滅多に携帯を使いたがらねえ土方さんがこんな風に真剣にメール打ってるんだ、その相手は容易に想像がついた。


「千鶴、ですか」


思ったままその名を口にしてみると、案の定土方さんは動揺したようだった。千鶴、という響きに土方さんはいつも過剰な反応を示す。今だって、酒を零しかけるのを、俺はばっちり見てしまった。


「ああ、飲み過ぎんなだと。ったく、俺は餓鬼じゃねえんだからよ」


「まあ、土方さんに飲み過ぎられると、俺が困るんで」


「そりゃどういう意味だ」


不機嫌そうに眉根を寄せ、土方さんは徳利に口を付けた。何だかんだ言いながら、ちびちびしか飲まねえところが、律儀っつうか何つうか……。昔みてえに無茶しなくなったのは、やっぱり千鶴のお陰なんだろうと思う。昔っつうのは、新選組だった頃のことも含めて、だ。


「俺にも、千鶴みたいな存在がいれば、丸くなれるんすかね?」


「千鶴はやらねえぞ」


「いやいや、みたいなってちゃんと言いましたよね俺?」


「そうだな……、まあ、お前もお前で昔よりは丸くなっただろ。色々問題起こしてたのが嘘みてえだ」


「はは、それを言われると耳が痛い。あーあ、俺もこいつだって腹決めれる相手が欲しいですよ」


「千鶴はやらねえぞ」


「……」


正直、土方さんは嘘みたいに丸くなった。函館戦争での土方さんを見れなかった俺は、初めてお互い教師という立場で会ったとき、かなり驚いた覚えがある。平和なこの世界だからこそなのかとも思ったが、千鶴と話しているのを見て、「ああ、こいつが土方さんを変えたのか」と直感した。それは、俺にとっちゃあ羨ましくもあり、眉間に皺寄せて自分を押し殺して新選組をまとめあげていた土方さんに心の安穏が訪れたことは、部下としても喜ばしかった。まあ、このデレように困ってないと言えば嘘になるんだが。


「原田、あいつは俺の生きる意味なんだよ、今も昔も」


「……あんたの口からそんな台詞が飛び出すなんてな。止めてくれよ、俺の立つ瀬がなくなっちまう」


「どういう意味だ?」


「そういうこと言うのは、俺の専売特許なんですよ」


はは、と乾いた笑いを洩らせば、結局分かってくれなかったらしい土方さんは、怪訝そうな顔をした。こんなに気恥ずかしいことばかり無意識にぽんぽん言われては、千鶴も大変だろうと思う。ああ、でも幸せなんだろうな、あいつは。


「結婚式、呼んでくださいよ」


「ああ、つうかお前も早く腹決めやがれ。そのままだと、あっという間にオヤジになっちまうぞ」


「んー、そうっすね。あーあ、千鶴が俺に心変わりなんてしてくれねえかな」


軽い冗談のつもりで言ったのだが、それを聞いた土方さんの顔は、修羅のごとく険しくなる。怖っ、と思った次の瞬間、なんと土方さんは瓶ごと酒を一気飲みするという暴挙に出た。勿論、下戸の土方さんは一瞬で泥酔。


「千鶴はやらあああん!」


と叫びながら、暴れ回り手が付けられない状態になった。いや、本当にマジで質悪いぞこの人。何とか店内を破壊しないよう押さえつければ(2、3発拳を食らったが)、土方さんは酔いが回ったのか寝てしまった。その寝顔の安らかなこと……。俺のこの疲労感は一体何なんだ。


「ああ、マジ泣きてえ」


そんな俺の呟きは、賑やかな居酒屋の喧騒に掻き消されてしまうのだった。



結婚しようと思います  




このままじゃ、
ストレスでハゲちまう!






壱央さまへ
相互ありがとうございました!土方と原田で大人な会話、とのことでしたが、何だか餓鬼臭いというか中2病みたいになってしまいました、ごめんなさい…(土下座)こんなんで良ければ、もらってやってください。そして、こんな駄目な管理人ですが、これからも仲良くしてくださいね!(^ω^)



コピーしたらこんなになっちゃいました。すみません土下座します切腹します。
澪さんから素敵小説頂いちゃいました!兄貴にきゅんてしたのはいうまでもない(テメッ)
リクエスト以上のものを、ありがとうございました!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -