大の字に寝転んで流れてる雲の大きさを比べる。
でかいのとちっさい雲の距離がだんだん広がっていき、形を変えていく。
「はぁー…あったけえ」
やっと春じゃんって思ってたらあっという間に五月になってた。
気候の感想を独り言として述べたにも関わらず律儀に千鶴が返事をしてくれた。
「すぐ夏になるね」
「あー夏かぁ。いいよなぁ海とか山とか」
「君の頭には娯楽しか無いんだね」
「うっせ」
空になったくせにストローをくわえたままの総司の足に腕を伸ばし軽くパンチ。
倍返しがきたのは言うまでもない。
「てかさ、時間が経つの早くねえ?」
「どうしたのさ突然。遂に脳細胞が消滅しちゃった?どんまい」
「めんどくせえよ!普通に会話しようぜ!!」
「平助と?無理無理」
あははと口だけ笑ってるのに腹が立つ。
さっきから見ていた雲はどこかに行ってしまった。
「同じようなもんだったのにな」
思い返せば千鶴も総司も、会話に参加せず本を読んでいるはじめくんも、ここには居ない薫も、小学生からずっと一緒だった。
なんて言うんだろう。ここまで来るとただの腐れ縁かもしれない。
「平助と千鶴ってあんま身長変わらなかったよね」
ねっ、と千鶴に同意を求めるように首を傾げる総司。
小学生なんて女子のが高いもんだろ。とか思いつつも本気でチビだったオレ。薫よりも。あれ、やべっ、泣きそう。
「身長の話はいいだろ」
「はいはい」
投げ出した足を更に伸ばせばはじめくんの足に当たった。こっちを見てるから、ごめん、と謝ればまたすぐに本を読み出した。総司とは大違いだ。
「あ、なぁ千鶴」
「なに?」
今日は雲が多い。もしかしたら明日は雨かもしれない。ジメジメしそうでヤだな。
温くなったコンクリートの床から起き上がると砂やら塵やらが至る所に付いていた。
ぱっぱと軽く払って伸びてきた前髪を見上げた。
「――いや、やっぱなんでもない」
すっかりぬるくなったジュースのパックをごみ箱に投げた。
「ちゃんと中に入れろ」
この時間でのはじめくんの第一声はそれだった。
孤を描くように
「うわっ!びっくりした…っ」
振り向いて睨めばにんまりと笑う総司。
頭上を越してごみ箱に入っていったのは、べっこべこにへこみまくった烏龍茶だった。
「あったかいね」
なんでそんなことを言ったのかはわかんねえ。
けど、いろんな意味が含められているはず。知ったかぶるつもりじゃなくって。
そんな千鶴の声が静かに響いた。
20100504
場所はどこなんだ。