遠目に見てもはっきり分かった。男装している以外は普通の女の子だって。扱えるのかも不安になるくらい細い腕は常にの存在を確認していた。
それは浅くも深くも張り巡らされてある情報を通じて耳に届いた。

雪村の鬼が生きていた。
それも、女。

確かめたくて仕方がなかった。聞けば歳も自分と大差無いと言う。今の今まで、何故知られることが無かったのか。いや、もうそんなことはどうでも良い。早く同類として会いたい。ただそれだけだった。

そんな考えは一瞬で消えていった。彼女、雪村千鶴を直に見て。
あの風間にも感づかれていると聞いて一度も会ったことが無いはずの彼女を心配していた自分が居ることに気がついた。そんな感情、必要無いはずなのに。
どうやら自分はあの子を普通の女の子として受け入れたようだ。




「幸せに、なんて贅沢を言っている訳じゃないの。
ただ、普通に生きていって欲しいだけ」



会って、話した。彼女と。新選組よりも確実に守ることができるコチラ側に来ないかと話を持ち掛けた。
ありがとう、という丁寧な断りをされて正直しかった。しかし、彼女の決断に異議を称えることなど出来るはずがなかった。協力はする。しかし、それしか出来ないのだと無力な自分を責め立てた。

目の前の元凶の塊と言いたくなるような男の周りには酒瓶が数本転がっている。


「あれはコチラ側に来てこそ存在価値がある」

「あの子はそんなこと望んでいないわ」

「意思など要らぬ。俺が求めているのはあの血だけだ」

「………最低、」


わらうこの男の顔を見たくなくて揺れる蝋燭に点された小さな灯を見た。はたはたと全身で風を受けながらも懸命に燃えるその姿。
出された湯のみに残っていたすっかりぬるくなってしまったお茶を提灯のひとつにかけてを消した。
じわりと畳が一カ所が濃くなった。少しだけ薄暗くなった部屋だが視界には困らなかった。


「何故そこまであの女鬼を思う」


急に、だけど当たり前の様な質問。


「友達だからよ」

「……実にくだらん」


鼻で笑いながら酒をまた飲み干していく。
私に言わせればあんたの考えの方がくだらない。
思わず空になった湯のみを投げ付けそうになった。










20100417
マリア

はじめて出来た友達って、すごく特別だと思う。





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