言い訳するつもりは毛頭ないが、やはり俺も人間だ。ミスのひとつやふたつしない訳がない。
「…………」
そう、兄の弁当と間違えたくらいなら可愛いものだ。中身も量もほとんど変わりはしないのだから。
しかしこの弁当はどうしようかと暫く蓋を片手に固まっていた。
「今日はライス丼?」
「……そんなはずなかろう」
パンをくわえた総司が覗き込みこの一言。一段目は白米。二段目も白米。必然的に兄の方におかずがふたり分いっているのだろう。
そっちならよかった、と文句を言おうにも毎朝作ってくれている母に対してそんなことは言えた口ではない。
しかし、どうするか。
興味津々ライス丼を見ながらパンを俺の顔の前でチラつかせる総司を無視しながら考える。
今購買に行ってももう売り切れているだろう。食堂も混んでいるだろう。なんだかんだ理由をつけているのは行くのが面倒臭いだけかもしれない。
「睨んでもおかずは出てこないと思うよ」
ごもっともだが、せめて塩かふりかけが欲しい。この年の男に白米だけとはひもじいものがある。
並ぶ白米が敷き詰めてある弁当箱を睨みつけるばかりだった。
よく噛めば甘いって
「もう食べればいいのに」
「ん?斎藤なにしてんだ?」
「白米とにらめっこ」
「………ふりかけやるから食ってくれ」
「だって。よかったねはじめくん……………聞いてないし」
20100407
居たんですよ、こんな人が。