自分が怖い…
油小路で死ぬのが怖くて変若水に伸ばし羅刹になった
莫大な力と治癒力を手に入れて戦うことのみ存在している羅刹
羅刹の証でもある白銀の髪、赤眼の瞳、そして吸血衝動
人から羅刹になった俺に生きている意味なんてあるのか?
表向きには死んだことになっている
俺の隊の奴ら、凄く泣いてくれてて、なんだが奴らの涙を流す姿を見ていたから俺って何してんだろうって気持ちになる
左之さんや新八っつぁんも俺がした選択に心から納得してるとは思えない
俺って最近、こんなのばっかりだ
ついこないだまでは御陵衛士と新選組で悩んでたばかりなのにさ










「藤堂君、お客さんですよ」

俺よりも早く羅刹になった山南さんが羅刹隊の部屋の壁に寄りかかっている俺に声をかけてきた
俺に客って誰なんだろう?
仕方がなく重い腰を上げ立ち上がり、道場の入り口に行くと見慣れた人物の姿が一人
しかもこんな真夜中にくる人物じゃねぇのに……

「千鶴……」

俺の惚……気になる人物だ
羅刹になってしまったから、どう言われても思いなんか告げられるなんて無理な話だ

「どうしたんだよ、こんな夜更けに…」
「平助君が気になったから…」
「俺は今のところはなんともねぇし、傷だってもう後も残ってねぇしな」

笑って返事するが千鶴の顔には笑顔がない
どうしたんだろうと思って声をかけようとしたが押し止まる
千鶴に見えないように握り拳を作りながら…

「千鶴」

千鶴は俺となんか関わっちゃいけない
だって太陽の下が一番千鶴は似合うんだ
もう太陽の下で歩けない俺なんかとは違う

「もうさ、土方さんとか一君、左之さんに頼りにしろよ」
「平助くん?」

千鶴は言葉を失った
驚いているか徐々に顔を歪ませていく

「俺にもう会いに来ないでくれよ」

こんな俺なんか千鶴に見せたくない
それが惚れてるから尚更だ

「どうしてそういうこと言うの?」
「それが千鶴のためなんだよ!!」

分かってくれよと思いながらも千鶴の顔を直視なんか出来ない
だって千鶴の瞳には涙が今にも零れ落ちそうなんだから…

「じゃあな」

これ以上千鶴のこと見られなくて背を向ける
だって俺は千鶴の涙なんか見たくない、見たいのは千鶴の笑顔だ
けど俺じゃ駄目なんだ
俺は千鶴のこと笑顔にさせられねぇから…

「平助君!」

戻ろうとした時、千鶴に声をかけられた
振り向かないで行こうと思ったのに、なんでだよ

「千鶴……」
「私のために背を向けるの?」

俺に問いかける声は微かだが震えてる
何も言わない俺に痺れを切らしたのか千鶴は…

「自分は羅刹だから?」
「そうだよ、俺は羅刹なんだよ、今は平気でも血に狂った化け物なのは違いねぇし、そんな奴がおまえの傍にいても仕方がねぇじゃん」

俺だって傍にいたいよ
千鶴の笑顔だって飽きるぐらい見たいんだよ
でも、無視だろう…
俺は人の生を捨てて羅刹になったんだから…

「それは私が決めることだもの、それに人でも羅刹でも平助君は平助君だもの!」

その言葉にハッとなった
俺、今、千鶴から大事なこと教えて貰ったのかよ…

「人でも羅刹でも関係ないってか…」
「関係ない、だって平助君なんだもの」

振り返り千鶴を見ると溢れ出した涙
泣かさせいるのは俺だな…
かっこ悪いな、本当に…

「ごめんな、千鶴」
「平助君」

千鶴に近寄り、濡れた涙を優しく頬で撫でる
少しでも早く千鶴の涙が止まりますようにと願いを込めながら…
そして……

「ありがとう」

こんな俺でもおまえの傍にいて良いのか…?
そんな不安があるけど今はほんの少しだけど千鶴が気づかせてくれたことを忘れないようにするよ
姿が変わってしまっても俺は俺で良いんだからさ…





‥‥‥‥
莉久さんにリクエストさせていただきました
平助くんと千鶴ちゃんかわいいかわいいかわ【このコメントは削除されました】

素敵な小説をありがとうございました!!


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