ふたりで分けれるものはたくさんあるのに、どうしてうまく三等分できるものは少ないんだろ。


「だから二個持ってきたのか」
「うん」


左右に一個ずつ握ってきたのは、ジュースを凍らせて真ん中でパッキンするアレ。
冷たくてそろそろ手が痛い。


「一個余るじゃん」
「足りないよりはいいと思ったんだけど…」
「半分だけ残すの?食べればよくね?」
「ジャンケンする?」
「それは後にしてとりあえず食べよう」


ソファーの背もたれから顔を覗かせた平助くんと、雑誌を読んでいる薫。
久しぶりに学校以外で三人揃ったからってことだったんだけど、特になにをする訳でもなくだらだらしていた。
ふと冷凍庫にあるコレを思い出して、今に至る。


「ぶどうとソーダどっちがいい?」
「オレぶどう〜」
「千鶴は?」
「私はどっちでも」
「選べよ」


あ、もしかして譲ってくれたのかな。
こういう時はいつも先に選ばせてくれる。小さい頃はそれについて何も思ってなかったけど、成長するにつれて、我慢して譲ってくれていたんだと思うようになった。同い年の、妹に。
でも言わない。だって薫、怒りそうだし。気のせいだろうって。


「じゃあソーダにします」
「よーし、パッキンしようぜ!」


でもね、薫の好きな方を残すようになったのも内緒にさせてね。これでおあいこってことで。……きっと薫は気づいているんだろうけど。
冷たくて、甘くて。この美味しさを三人で分かち合える方法はいくらでもある。今までだってそうしてきたんだから。






(チューペットうま!)
(え、パッキンアイスじゃないの?)
(藤堂家ではチューペット!こう言わねえの?)
(パッキンアイスとしか言わないよ)
(うそだろ!?)
(どうでもいいだろ…)





20100917

我が家では自分だけがチューペットです





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