(ヒカリ+婿/わくわくアニマルマーチ)
10.泣き虫ヒカリ+チハヤ
「チハヤくんは、私のことは嫌いだよね」
消え入りそうな震える声の、呟き。
「はあ?」
思わず素っ頓狂に驚いてしまい、台所からリビングに向かって振り返ると、椅子に座った少女は両手を顔で覆って、肩を緩やかに上下させている。
「嫌いだよね、毎日毎日、諦めもしないで会いにきて。しつこかったよね」
自分の非を認めているようで、他人の所為にするような、僕の最も嫌いとする当てこすりの発言。
「……」
返事をするのも馬鹿馬鹿しくて、何かの余興でも始めたのかもしれない、と無言で続きを促す。
「ずっと、何も聞こえない、何も見ない振りをして生きてきたんだ。だから、きっと、いつかは変わるって……うっ、ひっくひっく」
酷くせぐりあげる様子は、どうやら冗談ではないらしい。嫌悪以前に、ひたすら不可解だ。鈍感で超然とした彼女に、そんな自覚があったとは。
「何、いきなり泣いてるわけ?」
疑問と叱責の意味を込めて、涙でぐしゃぐしゃの顔に言葉を刺す。
「ひっく、だって、今までチハヤくんに酷いことしてきたから……」
さっきから同じことを繰り返し、繰り返し。だから、何。どうする。そんな馬鹿みたいな真似しないでくれ。いつも馬鹿な君が、更に馬鹿に見えるじゃないか。
「うん。本当に毎日やってきて、うざいししつこいし、さっさといなくなればいいのに、って思ってた」
「うぐ……うえぇん……」
次々に言葉のフォークを、刺して刺して刺す。最後には、甘い苺を飾って。
「今は違う。君、あんまり面倒くさくないし。だから、さっさと泣きやんでくれる? 僕が居心地悪い」
「……本当? 本当に?」
「本当だよ」
「え、えへへ。嬉しい…えぐっ」
瞳から零れる雫が、ああなんて美味しそうな、と、一瞬でも思ってしまったのがとても悔しい。調子に乗って僕をからかおうとしてるんじゃないか、なんて気づいても、からかわれてもいいと思う自分が、また悔しい。
「まだ泣いてる」
「これは嬉し泣きです〜」
苺のように真っ赤になって、流動するアパレイユのようにへなへなとして。殴りつけたいような衝動的な感覚を押し込んで、馬鹿じゃないの、と何度目か知れない罵声を浴びせた。
心の奥底では、泣いてたんだ
8.ドSヒカリ+ギル
「ギルくんはさぁ、こんな田舎で燻ってていいの?」
マニッシュスーツを着て伊達眼鏡を装着した彼女は、冷笑する。卑劣そうな笑顔に歪んだ表情は不気味でもあり、酷く愉快そうにも見えた。
「ここは僕の故郷だからな。今後は此処の子供達に教育する側として、力になりたいと思う」
都会に出ていく気など、今の所全く無い。母が亡くなり父が治めるこの土地で、僕は命尽きる時まで居よう。
「ふーん……ま、所詮その程度ってことか」
「なっ……」
投げやりに見下すような態度に、思わず頭が熱くなる。感情を抑え込むよう努力すると、棘に刺されるような痛みに苛まれる。
「いかにも世間知らずのお坊ちゃんらしい素晴らしいご高説に水を差して悪いけど、本当に子供達にちゃんと教えられるの? 本の知識だけのガリ勉君が」
減らず口がペラペラと、本の頁一枚一枚を破り取るように喋る。日常の会話で、どうしてここまで貶められなくてはいけないのか。いかにも批評だと言わんばかりな口調だが、内容はただの言いがかりだ。
「……君に、何がわかる」
努めて冷静なふりで強気に答えるが、僕の握りしめる拳を見て満足そうに頷き、彼女は人差し指を僕の眼前でくるくると回す。頭でっかちの蜻蛉になった気持ちだ。
「ほらほら、怒っちゃ駄目だよ。子供達はもっと君の心を抉る発言をするよ。確かにわからないかも、小さい頃に母親を亡くした、可哀想な可哀想なギルくんのことは」
「……」
一緒にしないでほしい、純粋な子供達の言葉と君の悪意ある言葉を。母の思い出に頼る僕を侮辱して、何が楽しいんだ。爛々と光るヒカリの瞳の中に、ぐるぐると目を回して突っ立っている僕の姿が見えて、押し寄せる目眩にいっそ倒れてしまいたくなる。
「そうやって、怒ったら押し黙る癖は便利だろうけど。ね、ギル先生」
睨んでいるのは僕だけで、憤っているのも僕だけだ。喧嘩にもならない、圧倒的な敗北。理論も何も無い話ではそもそも反論できないことをいいことに、無遠慮に言葉を突き刺してくる。
君は、僕の感情を逆立てる大天才らしい。
君の為に、辛辣なことも言っちゃう
3.陽気ヒカリ+オセ
「オセさーん! 一緒にお酒飲みにいこうー」
前方から突進してきたのは、牧場主のヒカリだった。水色の作業着を泥だらけにさせ、仕事なのか遊びなのかわからないが、激しく動き回ったことが見てとれる。
「良いけど、お前結構酒強かったよな。どうしたんだ、そのテンション。もうそんなに酒飲んだのか」
酒場で酒を飲んだ時も素面の時も変わらないように見えたヒカリは、今相当にハイテンションになっている。しかもいつも一人で飲んでいて誰かを誘うことも聞いたことがなかったから、ちょっとした驚愕で仕事帰りの喉の渇きが少し収まったぐらいだ。
「まだ一滴も飲んでないよ! ほらほら、私の奢り! 飲め飲め〜」
「ちょっ……いきなりそんな飲めねぇから! 待て!」
「ワン!」
「犬かよ」
「ぶっぶー、英語で1、でしたー!」
「何だそりゃ……ぷっ」
「わーいオセさんが笑ったー! やりましたっミッション達成ですっ」
「はは、お前、結構面白いのな」
「そうでしょー! もっと褒めていいのよー」
「はは……」
もっと、明るくおしゃべりが出来たらなあ
4.ツンデレヒカリ+ジュリ
「この服、ジュリさんに似合う」
「そウ? 嬉しいわネ」
「べっ……別にジュリさんの為に言ったんじゃないですから」
「あらっじゃあ本心からだなんて、ますます嬉しいワ」
「違います! ジュリさんなんてオカマでおネェで、かっこよくて美しくて……いっ今のは皮肉だから、勘違いしないでくださいっ」
「オカマは聞き捨てならないけど……何かしら、ツンデレって新鮮ネ。あなたのゴスロリ服、とても似合ってるワ。可愛いわヨ」
「むう……嬉しくなんか、ないんだから」
「はいはい、困った天邪鬼さン」
たまには、拗ねてみたりしたい
2.大人しいヒカリ+カルバン
「……」
「ねえ」
「何ですか」
「今日の君はやけに静かだな、と思ってね」
「私、いつも騒々しいですか?」
「いやいやそんなことないよ。ただ、あの雲はこうだとかこの花はああだとか、感性溢れる発言がないから、心配になっちまったのさ」
「そうですか」
「ああ」
「……カルバンさん」
「何だい」
「雲が、流れていきます」
「ああ、美しいね」
「……はい」
私が喋るより、あなたの言葉が聞きたいの
7.肉食系ヒカリ+ルーク
「おう、ルークいるか」
「いるぜー。ん、なんだ?」
「今から私と、どっちの方が木材をいっぱい集められるか勝負しろ」
「おおっいいなそれ! 早速やろうぜ」
「先手はもらったぁっ! トルネードスピン!」
「なんのっオレの必殺技を見ろ! くらえっ旋風斬ッ!」
「なかなかやるな、流石私の見込んだ男だ」
「へへへ、斧を持たせりゃハモニカタウンナンバーワンだからな!」
「どうだ、私の婿にならないか」
「おうともよ ……え?」
「冗談だ。ふん、そのぐらいで驚いていてはこの勝負、私の勝ちも同然だな!」
「なっ何ー!? オレは最後まで諦めないぞー!」
「それでこそ男だ。来い!」
君のように、かっこよくなれたらいいのに
9.森ガールヒカリ+タオ
「わあ〜あっちの雲さんかわいいです〜」
「今日はカメラを持ってきているのですね。何を撮るのですか?」
「うん、えっとね、雲さんとかお魚さんとか鳥さんをいっぱい撮ろうと思いますっ」
「そうですか。良い写真が撮れるといいですね」
「はい〜」
「おや、このとても可愛らしいハンカチは……」
「私の手作りですよ〜。タオさんに差し上げちゃいます」
「わぁ、本当ですか。ありがとうございます」
「えへへ、喜んでもらえて嬉しいなぁ。私、大好きなんですよ」
「えっ……」
「そういう、ふわふわしてかわいいものが」
「あぁ、そうなんですか」
何も考えない、無邪気な可愛い子になったなら
5.セクシーヒカリ+ウォン
「ああ、ウォン先生……胸が苦しいんです」
「君がそんなことを言うなんて珍しい。すぐに検査しよう」
「お願いします」
「口を開けて……風邪ではないようだね」
「先生、苦しいのは胸ですから。今、シャツを脱ぎますね」
「待ってくれ、衣服の上からで構わない」
「いえ、ちょっと熱いので……いいでしょう?」
「……! 君は、その、もしかして頭でも打ったのかね?」
「ふふ、そうかもしれませんね。ほら、呼吸は乱れてはいませんか」
「……い、異常は無いようだ。一応薬は出しておくが、家で安静にして過ごすこと。約束しなさい」
「はぁい、わかりました、先生」
(心配だな……)
色気があったら、振り向いてくれる?
6.ダルデレヒカリ+魔法使い
「はい、これ。タムタムダケ」
「……ありがとう」
「はあ……」
「……どうした?」
「いや、これから神さまに会いにいくの、面倒くさいなって。ねえ、魔法使いさんは行けないの?」
「……行かない。君が、行くべき」
「やだなあ。魔法でも使えたらいいのに」
「……そんな、便利なものじゃない」
「ええー、じゃあ魔法使いさんも一緒に行きましょう」
「……朝は、だるいし」
「私もだるい」
「……」
「……はぁー、わかった、言ってきます。あ、そうそう。今度、私のこと占ってね」
「……何で?」
「なんとなく」
やる気は見せないぐらいが、素敵かも
1.通常ヒカリ+神さま
「良いお天気ですね、神さま」
「そうだな。昼寝にもってこいだ」
「暖かくて、気持ちの良い空気です」
「……時に、下界の噂をちと耳に挟んだのだが」
「はい」
「おまえが十人に分かれたという、奇妙な話をな」
「それはおかしいですね。私は見ての通り、ここに一人ですよ〜」
「そのようだな。何にせよ、我は困らぬ。おまえが何人になろうとな。全て、ヒカリに変わりないのだから」
「……神さま、お祈りしてもいいですか」
「構わん。我は聞かん」
「ありがとうございます」
光十面相
(やっぱり、何をしても私は私以外になれない)