(タオ×ヒカリ)


ざあざあと雨の降る音が聞こえる。先程までその渦中にいたというのに、今は遠くにその音を聞きながら、ぼんやりと座っている。素足が、いつのまにか冷たくなっていた。

「今日の雨は長々と降りますねぇ」

濡れた髪を拭きながら、ヒカリさんが窓の外を垣間見る。薄暗い宵闇の中に、確かに雨が光るのを見た。

「はい、傘を持たなかったので、すっかり濡れてしまいましたね」

昼時から降っていた春雨はしとしとと穏やかだったため、傘も持たずに花見に出かけてしまった私達の服を、雨は緩やかに、そして確実にじわじわと染みた。私達はといえば、仄かな温かさを持つ雫をむしろ楽しむかのように、あえて享受しては微笑むばかりだった。

「タオさん、体は温まりましたか?」
「はい、足は少し冷たいですが、体は段々と温まってきました」
「そうですか。じゃあ、もう一緒に寝ましょうか。その方が温まりますから」

薄いルームウェアを着たヒカリさんが、私の座る寝台へと腰掛け、厚い布団にすっぽりとその体を隠した。顔と手だけを出して、ゆらゆらとこちらに手招いている。
ゆっくりと布団の中に潜ると、まだ温まりきらない布団がひんやりと四肢を包みこみ、その先にある柔らかな脚に触れた。己の脚よりも冷たい肌が次第に同じ温度になってゆき、一つになったかのような感覚を得る。

「また、お花見に行きたいですね」
「そうですね、雨で桜が散らなければいいのですが……」
「散る桜も、また綺麗ですよ」

掌を合わせてどちらからともなく囁き合っていると、雨の音が緩やかになった。熱を放つ脚をそっと寝台の外へと放りやる。火照った頬を他人事のように感じながら、春雨の中で見た桜の木々を思い浮かべていた。


春雨
 




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テーマ「人外ファンタジー」
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