目的もやり方も違うものの、求めているモノは同じだった。ただ、だからと言って僕にも彼らにも触れる事は許されないはずだった。いや、それはただの僕の持論なのだが、それでも駄目なものは駄目なはずだった。
汚らわしい、と思う。彼に吐き出された全てのものが。憎しみも、欲望も、全てを擦りつけられ震える彼は、あまりに弱々しかった。

体育館の倉庫に、嗚咽が反響する。控えめな泣き声だ。もっと泣いてもいいのに。そんな彼に僕が出来るのは、せいぜい隣に居るくらいだ。それで安心するかは、別として。出来れば体の汚れを拭いてあげたいのだけれど、落ち着くまで触れないで欲しい、らしい。秋になったばかりとはいえ、冷気が服を纏っていない彼の体を容赦無く冷やしていく。

彼は、まだ泣き続けている。
誰に何をされたかは容易に想像出来た。大方"運"だけでこの学園に来たのを妬む予備学科連中か、幸運という才能を馬鹿にする超高校級の生徒だろう。僕はこういう性格だから、そんな連中からさえすぐに見放された。でも、彼は違う。純粋で、素直で、人気者で。理不尽な憎悪でも受け入れてしまう彼は、格好の捌け口になってしまった。いつしか暴力も形を変え、彼を追い込んだ。どうして僕は彼を放っておいたのだろう。本当にクズで、蛆虫で、生きている価値のない人間な事だろう。こんなゴミ虫、死んでしまえ。