「もし、本当に妖怪がいたらどうする?」 …ちゃんと、さりげなく聞けているはず。 見ているドラマの話題ともばっちり会ってるし、これで僕の正体がバレるはずはない。 なのにこんなに怖いのは、"人ならざる者"が否応なしに拒絶されてしまうこと。 こんな事を聞いたのは、不思議な話が好きな彼ならば、もしかして、なんていう淡い希望。 だけどそんな希望は一瞬にして砕かれた。 「よ、妖怪とかいないべ!俺を驚かそうっつったってムリだかんな!」 ははは、と乾いた笑い声。 まぁ、そうだよね。そもそも葉隠クンは幽霊的なの苦手だし、普通の人だって…妖怪なんて気持ち悪いもんね。 「ん、苗木っち?どしたん?」 「あ…ご、ごめんね。もう帰ろう…かな」 「ちょ、苗木っち!」 やっぱダメだな、僕。 このまま葉隠クンと居るのは正直…辛い。 「待てって」 立ち上がった僕の手を掴み、それに次いで葉隠クンも立ち上がった。 「なぁ、今日は泊まれるって言ったべ?」 「っ、」 後ろから抱きしめられ、彼の熱が全身に伝わってくる。 「誠、」 ずるい。ずるいずるいずるい。 名前を呼ばれる事が、こんなにも嬉しい事だったなんて。 「んぅぅ、」 キスをされ、思考がぐずぐずに溶けていく。 流されちゃダメだ、所詮は妖怪、幸せになんかなれない。そうは思っているのに僕の身体はもう言う事をきかない。 こんなに好きになる事が辛いなら、葉隠クンとなんか出会わなければよかった! はじめての恋に堕ちる |