※Chapter4後
   最後までネタバレ



絶望。
その一言に全てが集約されている気がした。
絶望。絶望。
こんなにも希望に憧れているのに、絶望。
僕の周りには、僕を含めて絶望しかいない。
彼らならきっと絶対的な希望を見せてくれると信じていたのに、その実ただの絶望でしかなかった。
希望を得ることに絶望した今でも、自分は希望のために動いているじゃないか。そう自嘲気味に笑い、最後に開いた5番目の島へと急いだ。

橋を渡り、大きな塀に囲まれている軍事施設に入った。
オクタゴンに劣らず、十二分に人を殺傷できそうな武器がごろごろ落ちている。

トラックの荷台、筒状の物を発見した時だった。
「それは偽物だよ」
ようやく見つけたとそれを手にとると、どこからか声がきこえた。
どこか、というより真後ろ。
「そうなの?まぁ、それでもいいんだけど」
生き残っている生徒ではない、聞き覚えのない声。いや、死んでいった生徒の声でもない。
どことなく自分に似ているような奇妙さを覚え、爆弾を片手に振り向いた。
「ーーあ、」
「こんにちは、狛枝くん」
背後で僕の名前を呼んだのはこの島にいるはずのない人物、自分と同じ超高校級の幸運であり、自分達と同じくコロシアイ生活をさせられ、そしてあの超高校級の絶望を倒した、超高校級の希望。苗木誠。
「どうして、超高校級の希望がこんなところに」
あぁ、わけがわからない。目の前で眉を下げて笑う自分よりも小さなこの少年が、僕の追い求めた希望、なのか。
「もちろん、君たちを助けに来たんだよ」
唖然としている僕の手から爆弾のニセモノを取り上げた超高校級の希望は、この場所に飛ばされたのは幸運だったのかもね、と笑った。
「こんな物使ってもどうにもならないよ。僕が来たから大丈夫、みんなで外にでよう!」
真っ直ぐ目をみつめられ、力強くそう伝える彼はやはり超高校級の希望だった。

近ごろは生徒達の中で感じることのなかった、強い希望。なんて、美しいんだろう。
この人は絶望なんてするのだろうか。どうしたら絶望するのだろうか。そんな絶望すらものともせず、また希望を抱き進み出すのだろうか。

ぐるぐる回るのは、「絶望させて希望させる」こと。
これからしようとしたことだって一瞬で忘れ去るほどの魅力を放っていた。

「…あなたに相談したいことがあるんだ。」

じくじくと湧き上がるえも言われぬ希望に、胸が高鳴った。