狛苗おまけ


僕の才能はあてにならない。
そもそも"才能"と言えるような特筆されるものではないし、たまたま抽選で当たった。それだけ。
むしろそこで全ての幸運を使い切ってしまったのかもしれない。

シャワーの音と荒い鼻息の篭る小さな部屋で、苗木誠は現実逃避を試みた。



「この部屋のシャワー使うんだから!」
いつもと変わらぬ笑顔で言うものだから、一瞬、何を言っているのか理解できなかなった。
「シャワーで2人はキツイよ!」と、とりあえず言ったものの、密着すれば大丈夫だ早くと手を引かれた。

「大浴場に行くんじゃないの!?」
「本気で言ってるの?苗木君とお風呂なんて超幸運イベントなんだよ?死人が出ちゃうよ!でもここなら大丈夫!僕と苗木君しか居ないからね。君の幸運で僕の幸運の代償なんて吹き飛ばしちゃうよ!
さぁ脱いで!それとも、僕が脱がしてあげようか!」
「じ、自分で脱げます!」
「遠慮しないでよ!」

ああこれはもう逃げられないなと悟るが、着々と進んでいく話についていけない。
それこそ無遠慮に僕のシャツを脱がしていく。
ボタンを外す手を精一杯抑えているのだけれど、意味がなくて。
これ以上脱がされないようにとシャツごと自分を抱きしめると、今度は僕の両手をまとめて壁にぬいとめてしまった。

「ちょ…狛枝クン、自分でできるから!」
「なんで?僕に脱がされるのは嫌?」
「普通人に脱がされる事なんてないよ!」
「そっか…まぁ、いいや。」
何か考えるような仕草をし、思ったよりも簡単に手を放してくれた事に安堵する。
「ってことは、苗木君のストリップショーが見れるんだね!?」
「えぇぇぇえぇえぇっ、なんでそうなるの!?」
「ほら、早くしてよ。全裸待機してる僕の身にもなって。これでも寒いんたよね」
「うぅう、」

狛枝クンがそういう事を言わなければこんな恥ずかしくなることも無かったのに…
覚悟を決めて衣服に手をかける。

「待ちくたびれたよ!」

僕が大人しく脱ぎ始めたのを確認して、狛枝クンはシャワーの温度を調整していたようだ。
心地よい温度のお湯をかけられ、やっぱりお風呂に浸かりたかったなぁ、なんて思う。
/ぶつ切り
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