十神さん×苗木さん
女体化注意



4月の某日。
満開の桜を臨む、苗木を独り占め。



春休みに入る前だった。
「みんなでお花見行きたいね」と、苗木誠は言った。
いつものようにクラスメイトに囲まれて。

その「みんな」に私も含まれている事を、私は知っている。
どんな突き放した態度をとっても、彼女だけが、私を特別扱いしようとせずに話しかける。
――馴れ合いは嫌いだ。
何のメリットも生まないし、ただ頭の悪い愚民達にイライラするだけ。
自分の考えが「普通」であり「衆知」だと思う事に、何の疑いも持たない。ただ思考力を怠惰に持て余す奴らになど興味はない。

だからこそ、私を「クラスの一員」とひとくくりにする彼女が嫌いだった。
私と彼女はあまりに違う。なぜ、それがわからないのか。

「ね、十神さんも」

一緒に行こうよ、と。




* * *



春休みが始まった。
寒桜は既に花開き、見頃を迎えていた。

「(苗木達はもう)」

寄宿舎から図書室へ行く途中、
窓から見える桜に、ふと苗木を思い出した。

「(桜を見たのだろうか、)」

ガタガタ、と音がして立ち止まる。
激しい風が吹いている。
桜の花びらが一斉に舞い、円を描く。

――彼女も同じ景色を見ているのだろうか、そんな言葉が浮かんで、はっとする。
どうして私が苗木の事を気にしなくてはいけないんだ。これではなぜだか苗木の事が好きみたいじゃないか!

「っ、」

窓の外を睨んで、歩みを進めた。
有り得ない、私が誰かを好きに、なんて。有り得ない。

ようやく図書室へ着いた。
思わぬ事で時間を割いてしまった――しかし、図書室なら私の気も落ち着く。いつもの私はこんなでは無いはずなんだ。

乱れた心を落ち着かせるため、大きく息を吸った。
そうしてドアノブに手をかけ、扉を開ける。
瞬間、窓を開けた時のような激しい風が私の全身を包んだ。ああ、



「苗木」

名前を呼ぶと、外を見ていた彼女が振り向く。
風に揺れる彼女のスカートも、柔らかそうな髪も、何もかもが。

どうしてこんなに私の心を掻き乱すのか。









(図書室に2人きり、)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -