1122 夕食時はいつも、食堂には全クラスメイトが集まり各々で食事をとっていた。 厨房はあるがシェフがいない為、一事は当番制を敷いたが全く約束を守らない者、料理ができない者が続出したためすぐに廃止となった。 その「料理ができない者」という枠に置いては僕も例外じゃなく、毎日レトルト食品で空腹を満たしていた。 「苗木くんってカレー好きなんですか?」 倉庫で本日の夕食を物色中、同じく「探しもの」をしていた舞園さんが僕の手元を見ていた。 「ああ、これ?好きっていうか、これが1番作るの楽なんだよね」 「じゃあ、私がお夕飯作りましょうか?」 いいの?と答えると、「いつも苗木くんは色んな種類のカレー食べてるから、カレーの1番を吟味してるのかと思ってました」とはにかむ。 少しでもカレーに飽きない為にしていた事が舞園さんの手料理を遠ざけていたなんて、やっぱり"超高校級の幸運"はあてにならない。 「それでは食堂へ行きましょうか」 食堂に行くと既に数人が夕食を取っていた。 舞園さんはここで待っていて、なんて言うけど舞園さんにだけにやらせるのはおかしいよね。 「手伝うよ」って言ったらまるでわかっていたかの様に快諾してくれた。 「(あ、いつの間にエプロン持ってきたんだろ)」 「このエプロン、倉庫にあったんですよ」 「(もう驚かないぞ…!)」 「ちなみに苗木君の分もありますから」 「最初から気づいてたの!?」 「エスパーですから。……冗談です。ただの勘です」 手渡されたエプロンは何故か舞園さんのエプロンよりもフリルが多かった。 「あれ?2人で夕飯作るの?」 「そうだよ」 「朝日奈さんも一緒にどうですか?」 「楽しそうだね!私も手伝わせて!」 「朝日奈さんもエプロンどうぞ」と、舞園さんはエプロンを差し出した。 「わーい!準備万端だねっ」 サクラちゃんに美味しいご飯を作るぞ!と意気込んでエプロンをつけた。 …やっぱり僕のエプロン、フリルが多いよな。 「じゃ、邪魔よ。アンタたち…」 恨めしげな声で言ったのは腐川さんだ。 「腐川ちゃんだー!一緒にご飯作ろうよ」 「だ、だ、だ誰がアンタたちと!」 「ほらほら、やろうよ!」 「作って差し上げたい人が居るんじゃないですか?」 「作って…あげる……?びゃ、白夜様…わ、私のご飯、食べてくれるかしら…」 「はい、エプロンです!」 「わ、私は…勝手に作るから!」 「腐川さんって料理できるの?」 「できないって思ってんの!?あ、あああたしが、ブスだからぁっ!?」 「そ、そういうわけじゃなくて、」 「…できないわよ」 「へ?」 「料理なんか作れるわけないでしょ…!」 その言葉通り、ボウルを倒しては皿を割り、更にはコショウにまで手を出した。 「コショウは!僕がやるから!」 「…何よ。そんなにコショウかけたいの?」 「あ、ああそうなんだ!コショウ大好き!」 「ふーん…」 そうして失敗しながらも着々と料理を完成させていった。 一方食堂では―― 「舞園ちゃんエプロン着てるぜ!」 「苗木のエプロンのフリル激しすぎるべ」 「裸エプロンがありませんな」 「だからおめーの2次元オンリー設定はどうなってんだべ」 「苗木は俺の嫁」 「校内放送です。曜日感覚皆無なオマエラにお伝えします。今日は…な、な、なんとぉ!いい夫婦の日だったのです!ではでは、有意義な時間を。」 「苗木君、そのカレー私にくれるわよね?」 「え?」 「だって、今日はいい夫婦の日なのよ?私を労いなさい!」 「えぇー」 |