(非)日常
葉苗風味


「まーくんまーくんまーくぅぅん!」
「ちょ、怖いってジェノサイダー!」

そんな騒がしい声と共に食堂のでかい扉が開いた。
来たのは言わずもがな、苗木と腐川…もといジェノサイダー翔。

「逃げんなっつってんだろが!」

豹変した彼女を示す象徴的なあのハサミを向け、今にも襲い掛かろうとする威圧感をもろともせずに霧切が間に割って入った。

「やめなさい」
「あら?あらららららら?邪魔するのかしらぁん私×まーくんの熱ぅい夜を」
「なに言って、」
「そうよ。なに言ってるの。」

なに意味のわからない事を言っているんだ、という僕の声は霧切さんによって遮られた。
そして彼女の言った言葉も、なんだか検討違いなものだった。

「馴れ馴れしくまーくんなんて呼ばないで!」
「えっ、そこ!?」
「重大な問題よ」

とても真剣な顔の彼女は、そもそも冗談なんて言わないはず…なのだが、これは冗談だろうか。

「いいじゃない、どう呼ぼうが。あんたに言われる筋合いねぇし」
「そうは言えないわ。あなたは苗木君に不快な思いをさせてる。これは由々しき問題よ」
「はぁ?」

あああ、何これ超こわい超居づらい。
助けて欲しい、と周りに視線を送るが誰も目を合わせてくれない。

そんな時、大きな音を立てて食堂の扉を開いたのは――葉隠クンだった。

「よぅ、…何やってんだ?」
「苗木君に対する馴れ馴れしい態度を止めて貰う様に説得してるの」
「は?」
「呼び方なんて人それぞれじゃない。ねぇまーくん」
「え?あ、ははは、…」

苦笑いしか出来ないよ、正直怖いし。
葉隠クンは何か考え込んでるみたいだし。

「…誠」

その、考え込んでいた葉隠クンが急に口を開いた。僕の名前を。

「誠、誠っち。うん、いい響きだべ!」
「え、え?」
「今日から誠っちな!」
「よくない!」
「そうなの?葉×苗なの?やだ萌える」

葉隠クンの「誠っち」発言に霧切さんは余計に怒り、ジェノサイダーは何故か顔を赤らめ、もう僕にどうしろと。




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