コープスと
1で脱出後


黒い。

暗い、ではなく、黒い。
それはえもいわれぬ不安や憎悪が形を成して身に纏わり付く"黒"になったのではないか。

そんな事を考えながらボロボロの校舎の中を歩く。
そこら中にある人為的な罠、底の見えない廊下に空いた穴、そして死体。
きっとオカルト嫌いな葉隠クンは泣いているに違いない。彼を思い出すと、この得体の知れない学校に来てしまった経緯を思い出してしまう。



「ずっと仲良くいられるおまじないだべ!こんな状況なんだし〜、やってみねぇ?これマジでいいらしいぞ!」

シェルター化された希望ヶ峰学園から脱出し、希望が広まりそこそこ暮らしやすくなったある日、葉隠クンが「幸せのサチコさんをしよう」と言い出した。

十神クンや腐川さんは面倒臭さがってたけど結局葉隠クンと朝日奈さんが押し切り"幸せのサチコさん"をする事になった。

「ほら、これ持つべ」
「なにこれ」
「なんか…本格的ね」

渡されたのはおまじないというより呪いに使うような人型の紙だった。
「サチコさんお願いします」と心の中で10回唱えてから紙を引きちぎる。そうすればこのおまじないは完成するという。

「失敗すんなよ?」

葉隠クンのその言葉が始まりの合図のように、みんな一斉に静かに目を閉じた。
僕も慌てて目を閉じ、例の言葉を唱える。

――サチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いしますサチコさんお願いします――


「じゃあみんな、せーのでちぎるべ」
「せーのっ」

ビリッ、
右手、左手、右足、左足、頭、胴。人型が6つに契れた。

「よっし成功成功。この紙は大事にしないと死ぬべ」
「死んじゃうの!?」

そして――大地が揺れ出した。
立っている事すらままならないくらい大きな揺れで、気をとられているうちに地面にぽっかり穴が空いて、どんどん拡張していき、僕達は抗う間もなく落ちてしまった。



きっと、"幸せのサチコさん"をやったせいでこの学校に来てしまったのだろう。
死体の中にはメモを遺しているものが多く、その全てに"サチコさん"という名前が出てきたから間違いないだろう。だからといって何がわかる、という訳ではないのだが。

「にしても…誰か居ないかな」


江ノ島さんが言っていた。「世界は終わっている」と。実際、僕らは荒れ果ててしまった世界を見てきた。――それでもここ程ではない様な気がする。
それでもここから出れたなら終わってしまった世界でも喜んで出るのだろうか。
もし、僕らの様にここに飛ばされて――世界が終わってしまったのを知らなかったら…どう思うのたろう。




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