恋チョコと
恋チョコパロディ
生徒数6000人を超える超巨大学園・高藤学園では今、「江ノ島盾子」の名前を知らない者は居ない。

彼女は例の"江ノ島事件"と呼ばれる不祥事を起こした生徒であり、そして僕のクラスメイトでもあった。
教室にいる江ノ島さんは決して不祥事を起こすような人ではないし、経済特待生が差別を受けている最中も、このクラスだけは平穏無事、皆仲が良かった。

だからこそ、納得がいかないのだ。
本当に江ノ島さんが不祥事を起こしたのだろうか。

「生徒会長、辞任はしないみたいだよ。」

そう言って、前の席に座っていた不二咲さんは体を僕に向き直し、開いていたノートパソコンに目配せした。

江ノ島さんを治安部長に任命したのは生徒会長である松田夜助だ。
その任命責任を問われ、今、辞任を迫られている。

「見苦しいべ。いつまでも会長席にしがみついてるみてーで」
「つーかよぉ、なんで事件の真相が知らされねーんだ?」

葉隠クンや桑田クンも輪に混ざり、そのうちクラス中が"江ノ島事件"について話し始めた。

「生徒会長は辞任しない、じゃなくて辞任出来ないのよ」

そんな中、霧切さんも僕らの話に加わった。

「なんでだ?俺の直感からして間違いねーべ」
「バカね。生徒会長はもうすぐ任期も終了するのよ?生徒会長の代理は副会長が出来るとしても、引き継ぎは生徒会長にしか出来ない仕事だわ。だから、生徒会長はなんと言われようとも辞任できないの」
「バカって言うな!ひでーべ!」

僕はなるほど、と思ったのだが、葉隠クンはそれよりも最初に言われた「バカ」の方が気になるようだ。
霧切さんも呆れているように見える。

「でもよ、事件の詳細公表しないって変じゃね?」
「きっと、言えないような事があるんだよ!」

桑田クンの言葉に反応して、朝日奈さんも話に加わっていった。
そうして、何時の間にかクラス全体でディベートが始まっていた。

「実は不祥事を起こしたのは江ノ島ちゃんじゃなくて生徒会長とか!」
「それは何というか…王道すぎてつまらないですなぁ」
「逆に江ノ島さんが生徒会長を脅している…とか」
「ああああの尻の軽そうな汚ギャルが?そんなの、出来っこないじゃない」
「み、みんな少し落ち着こうよ…」

ただでさえ1クラスの人数が多いのに、こう騒がれるとかなりうるさい。
何事かと先生が飛んできやしないか、ピッタリと閉められた扉をチラリと見た。
動く気配は、ない。

「うるさいぞ諸君!真面目に自習は出来ないのか!!」

先生は来なかったが、クラス委員の石丸クンの怒声が響いた。
机には教科書とノートが広がっている所をみると、彼は1人黙々と予習をしていたようだ。

「大体何なんだ、生徒会長1人を責め立てるような事ばかり言って!そんなに言うなら君達が生徒会長になってみたまえ!そうすれば指揮する者の大変さがわかるはずだぞ!」

そう言い切り、興奮冷めやらぬのか、荒い息を吐いている。
シンと静まりかえった教室には石丸クンの声だけが聞こえていて、誰も喋ろうとする者はいなかった。

静寂を破ったのは、霧切さんの一言。

「それは名案ね」

1秒、2秒。ポカンと口を開け、次の瞬間には教室が叫喚に包まれた。





不祥事起こして謹慎中の盾子ちゃんのために立ち上がる。
部内選挙ならぬ教室内選挙をして選ばれた苗木が生徒会長になるまでのお話。

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