おおかみかくし×霧切響子

カチカチカチ…

どこかで耳障りな音が聞こえる。
どこか上擦っているような、不快感。

カチカチカチ…

どこか、なんてもうわかっている。
その音は目の前にいる男から発せられているのだ。
これで会うのは二度目だったが、彼のその特徴的な癖はすぐに彼が「焦っている」ことを現しているとわかった。


そう。彼は焦っている。

4年間もがむしゃらに出口を探し続け、それでも尚彼は暗いトンネルの中にいる。――そう比喩的な想いを馳せ、"彼"を見た。

それに気づいたのか、彼も私を見る。

「バラバラ殺人は、本当にあったんだ。三重子は殺され、隠された。4年前、何があったのか知りたい。"超高校級の探偵"のお前なら…できるだろ?」

この男の目的は真実を知る事だけではない。――復讐する事。彼ならそれをやりきるだろう。そしたら彼はどうなるだろう。きっと彼は人生をかけて復讐を遂げる。ならば生きる意味など無くなる。ならば、きっとそのあと彼は……。

「どうした?」

黙り込んだ私が気になったのか、声をかけられ気づく。
私が、探偵が依頼主をこんなに勘繰るものじゃない。依頼を果たした後でどうなろうと、私は私の仕事を果たすだけだ。

「…いえ、気にしないで。この依頼、引き受けるわ。」



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