キミは泣いてツヨくなる




「やぁ。」

突然の訪問者、グラハムはそう言うと
高らかに右手をあげて
ずかずかと私の家に入ってきた。


「やぁ、じゃ無いわよ!」


時計を見ると朝の4時。
例え恋人同士であったとしても
流石にアポ無しでは非常識である。


「今日は、リリィをデートにでも誘おうかと思って」


グラハムはそう言うと
勝手にキッチンに行きコーヒーを入れ始めた。


「私がやるわ。…で、いきなりどうして?」


コーヒーと、簡単なお菓子を用意して
グラハムの元へ行く。


「ん…あぁ、普段リリィを心配させているお詫びだ」


椅子に座って何でも無い様に言い放っている、
そんな彼の顔は、凄く悲しくて。

普段は何事にも動じないから、
…否、ポーカーフェイスを装っているから
こう言うとき、本当に何かあったんだと分かる。


「お詫びなんて要らないわ」


こう言うとき、
決まって私はこう言う。


「貴方だけ、居てくれればそれでいい」


グラハムはリリィ…と呟いたきり何も言わない。
視線も合わせない。

分かってる。残酷な台詞だって事は。
軍人に、そんな事言っては駄目だって
ちゃんと分かってる。

けど、


「せめての支えになりたいの」


ガンダムなんて知らない。
フラッグでさえも分からない。
何が正義で何が悪かも分からない。

それでも、



「貴方が毎回泣きに帰ってきてくれれば、それで良い。」




暫くの沈黙のあと
とても優しい、震えた声でリリィ…と呼ばれ
心地良い胸に抱きしめられる。

私は泣かないよ。
そう言う貴方の腕の中で
震える腕に気づかない振りをして
今日もグラハムの生きてる証を聞く。



キミは泣いてツヨくなる

(付き合って欲しい所があるんだ)
(どこ?)
(ハワードと言う男のところだ)
(そう…お花屋さん…寄ってく?)
(…あぁ…)



2008.03.13
グラハムは心を許した人の前だけで泣けば良い





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