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「あれ、お前もしかして仁王の彼女?」
立海に着くと、びっくりするほど赤い髪の毛の男の子に声をかけられた。(「マルイくんじゃん!」と友達が横で歓喜の声を上げた)最近知らない人に声をかけられるなあ、と思いながら、彼が放った単語に頬が熱くなり、心臓が騒ぎ始めた。
「か…彼女なんかじゃ…!」
「あァ、トモダチだっけ」
彼は意味あり気にそう言ってガムを膨らませた。よくみればテニスっぽい服を着ている。ラケットも持っている。ニオーくんの、友達?
「何でもいいけどよ、仁王なら今部室裏でサボってるぜぃ」
それだけ言うと、彼はラケットをくるくる回してテニスコートらしきところに向かった。
(お、女の子がいっぱいだ…)

「行くしかないわね、部室裏」
「え」
「頑張って。私は丸井くんを応援するから」
「そ、そんなあ」
「頑張って仁王くんの彼女になるのよ!」
友達はテニスコートに行き、私はしぶしぶ部室を探した。それは思いの外すぐに見つかり、裏に回ると心地よい日陰の中に、銀色が見えた。
「…名ちゃーん……」
名前を呼ばれた。足がすくんだ。あの時と同じだ。ニオーくんに、初めて声をかけられた時。心臓の音が響く。
覚悟を決めた。ニオーくんまで、あと二メートル。


初夏の風が吹き抜けた。私には、もっと冷たい風が吹いてほしかったけれど。

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