text | ナノ

「……暑いのぅ」
誰もいない部室裏の木陰でサボっていた。夕べ姓さんに連絡先を聞き忘れたことをひたすら後悔していた。テニスにだって身が入らない。先輩らにどやされるかもしれないが、それよりも真田の鉄拳の方が怖い。その真田は今日委員会で遅れて来る。幸村も定期検診で休み。絶好のサボリ日和じゃないか。
(女子の黄色い声は苦手ナリ…)
サボっている理由のひとつに練習中のギャラリーが鬱陶しいのもある。俺らはアイドルじゃない。別にその他大勢の女子に騒がれても嬉しくない。
「……名ちゃーん…」
会いたい、と思って、小さく呟いた。呼んだこともない、名前。こんなとこで会える訳ないのに。

と、思っていたのに。
「……におーくん?」
「!」
地面に投げ出していた体を、凄い勢いで起こした。幻聴なんかじゃなかった。姓さんが、そこにしゃがみこんでいた。
「姓さん、何でここに?」
「友達がね、立海に行きたいって言うからついてきたの」
やっぱり頬を染めてはにかむ姓さんは、かわいい。恥ずかしそうに髪の毛をいじるのが、それを引き立たせる。
「練習、行かないの?」
「…プリッ」
俺の口癖が気になるのだろうか。少し困ったように眉を下げた。
「…うそだよ」
まただ。顔が真っ赤になって、俯く。長い睫毛がよくわかる。


怖いくらい、舞い上がってる。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -