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名はまた学校を休んだ。それはクラスの中では不思議なことではなく、「ああ、また休みか」と思う程度だった。近しい友人と言える仁王や丸井でさえ疑問に思わなかった。
だが真田は違和感を感じていた。朝、テニスコートで目が合った瞬間に立ち去った名。校舎に入ると姿はどこにもない。連絡を入れても返ってこない。連絡先を知らない仁王や丸井が名の行方を知る由もない。今まで真田が連絡を入れて、丸一日返ってこないことは無かった。
胸の内にモヤモヤを抱えたまま、真田は部活へ足を運んだ。


(初めてだ、)
何も言わずに学校を休んだ。家に帰って、少し眠り、目が覚めたときに携帯を開くと着信履歴が二件あった。どちらも真田だった。いつもなら名はすぐにかけ直していた。だが、ディスプレイの文字を見るだけで今朝を思い出して、名は布団を被った。次に目が覚めたときにはもうすっかり日が落ちていた。
「やっと目が覚めたか」
低い声が部屋に響いて、名の頭は一瞬で冴えた。
「…なんでいるの」
「学校はどうした」
真田は怒っていた。いつもは声を荒げて眉を潜め、目に見えて怒っているのが、今は静かに名を見つめている。
「別にいいでしょ。起きれなかっただけだもん」
「何を拗ねているのだ」
「拗ねてなんか、…弦一郎だって怒ってるじゃん」
名は寝ころんだままだった体を起こし、真田に背を向けた。
「…何かあったのか?」
名の頭の中で何かが弾けた。今朝の真田とマネージャーの姿がフラッシュバックする。
驚くほど素早く名は振り返って、胡座を掻いた真田の方まで行って、彼を突き飛ばした。予想外の名の行動に真田は驚き、後ろに手をついた。
刹那、真田は近づく名に気付いた。それを脳で認識したときには、お互いの唇が触れ合ったあとだった。
「…おやすみっ」
名は再びベッドに戻り、布団を被った。真田は時間が止まったように、その場に立ち尽くすならぬ、座り尽くしていた。

0710
ずるいったらないね

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