text | ナノ

休み時間はトイレに駆け込み、授業中は目を合わせないように必死でノートを取った。お昼休みはお弁当を掴んで他のクラスの友達のところに走った。
「あんた今日ずっとそんなんしてるん?」
息を切らして走ってきた私を見て、友人は言った。私は元気よく返事をした。友人はため息をついた。
「そら忍足くんも落ち込むっちゅー話や」
私の愛しい愛しい恋人の口癖を真似て、友人は私のたこさんウインナーを摘んで、口の中に入れた。すごく楽しみにしてたたこさんウインナーだけど、協力してくれたお礼と我慢した。

最後の授業は英語だった。
謙也の大好きな授業だから私も英語が好きだ。謙也はどことなく楽しそうに授業を受ける。いつもなら。
(寝てる?謙也が?英語の授業で?)
謙也の頭は金ピカでひよこさんみたいだから目立つ。そのひよこさんは今日は机に伏している。私だって英語が好きなのに、謙也にばかり目がいってしまう。集中できずにぼんやりしていると、隣の席の白石くんが私に話しかけた。
「謙也な、落ち込んでるねん」
ぼそぼそと、私でさえ聞き取りにくい声だった。
「名が喋ってくれへん言うて」
机に伏したひよこさんをチラッと見た。白石くんはニヤニヤしている。
「作戦大成功やな」
私は安心した。謙也が落ちこんでいるなら白石くんの言う通り、作戦大成功だ。何の作戦かというと、それは六限目が終わってからのお楽しみ。謙也には申し訳ないけど、きっと喜んでくれるはず。

「名、俺別れへんで」
今日の落ち込みはどうやら謙也を究極の考えにまで陥れてしまったらしい。授業が終わって急に席まで来られて、は?そんなことを言われても。意味わからへん、って感じだったけど、私はニヤニヤが抑えられなかった。
「まだ名のこと好きやし…っ」
ひよこさんが、耳まで真っ赤だ。泣きそうなのを堪えてるのかな。教室にいっぱい人がいて恥ずかしいのかな。とりあえず、私は謙也の頭を撫でた。謙也は私の方を見た。真っ赤な顔で。
「謙也、誕生日おめでとう」
鞄から包みを取り出して、ぽかんとしている謙也に持たせた。中身はベルト。悩んで悩んで悩んだ末のプレゼント。謙也は喜んでくれるだろうか。感極まって泣き出すだろうか。否、そのどれでもなく、私を抱きしめて、ちっちゃな声でありがとう、と言っただけだった。やっぱりちょっと意地悪してあげなきゃ愛の大きさはわからないよねえ。

110317
しょうがないでしょ好きなんだから



Kenya Happy Birthday!!


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -