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名前:名
件名:うみがみたい
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ゲンイチローーーー

  ‐end‐


全国大会は準優勝という結果に終わり、真田達三年は引退を迎えた。だが立海の伝統であることと、来年こそは全国制覇を、という思いから練習のサポートとして顔を出している。名からのメールに気付いたのは練習後だった。海が見たい。おそらく件名が本文なのだろう。
(子供か)
仁王と丸井から名のことを尋ねたところ、あれからきちんと授業を受けたと聞いて安心していた。メールの送信された時間はショートホームルームの後。つまり三時間以上前のことだ。
(…まさかな)
立海大付属中は海に近いところにある。だから海を見ようと思えばすぐにも見られる、というか通学路なので嫌でも見えるのだ。しかし灯りは無いと言っても過言ではない。真田がメールに気付いたとき、辺りはすでに真っ暗だった。
(いや、ありえる)
携帯電話のディスプレイと睨めっこをしている真田は周りから見ると実に滑稽だった。ほとんどの人間は、姓名関係だろうと見て、第三者に回った。彼らにとって彼女と真田はいつ見てもおもしろいものだったからだ。
(一応、かけてみるか)
そうとは知らない真田は、発信履歴から名に電話をかけた。それはアドレス帳など開かなくても容易いことだった。
「…何だあのメールは」
『海が見たくなったの!』
昼間の眠そうな雰囲気と違って、元気な声だった。その中、真田は小さく聞こえる音に、耳をそばだてた。水のぶつかり合う音。押し寄せ、引き、また押し寄せてくる。
「貴様、まさか一人で、」
『弦一郎が返事くれないのが悪い』
「待っていろ。迎えに行く」
着替えたり喋ったりスポーツドリンクを飲んだりしていた真田以外の立海テニス部員は、真田が慌てて出て行ったのを見て顔を見合わせた。
「結局つき合ってるんスか?あの二人」
「ちっげーよ。だからおもしろいんだろぃ」
「青春じゃのう」
そんなことはつゆ知らず、真田は重いスポーツバッグを背負って走っていた。あいつは馬鹿だ、と考えながら。


110430
あいもかわらず

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