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真田弦一郎は悩んでいた。それは風紀委員長としてもだったが、一幼なじみとして心配な人間がいたからだ。彼が気にかけていたのは、生活態度ではなく、いや、それも勿論だが、それ以前の問題だった。彼の幼なじみは学校をよくサボる癖があった。いくら義務教育だからとは言っても、いくら立海大付属中学がエスカレーター式の学校とは言っても、高等部に上がるのに有利にはならないだろう。小さな時からの彼女、姓名を知る彼は、手の掛かる妹の面倒を見ている兄ような気分だったし、彼の周囲もそんな風に見ていた。むしろ、小さな娘とそれを心配する父親のようにも見えた。誰も口には出さなかったが。
「む、また名はサボリか」
「体育は来とったみたいじゃが」
「ふむ。すまんな仁王」
目的の人物がいないのを確認すると、真田はため息をついた。頭の中にひとつ、心当たりを思い浮かべた。心当たりと言っても、名の行くところはひとつしか思いつかなかった。学校の敷地内にいれば、の話だが、馬鹿と煙は高い所に登るとはよく言ったものだ。
「しっかし真田もあいつのこと好きだよなあ」
「あれはもう好きとかじゃないぜよ」
早歩きで去っていった真田はしかめっ面だったが、どこか楽しそうな、というよりは嬉しそうだったのを、仁王は感じ取った。少しずつ小さくなっていく真田の背中を見ながら、丸井は首を傾げた。
「執着、みたいなもんじゃのう」
お互いにな。仁王の口角は上がり、丸井の首は正常な位置に戻った。ああなるほど。思わず納得してしまった。


110406
純愛とは儘ならぬ

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