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「ちょっと昨日なんでメールブチったん名ちゃん」
「あんまり近づかんといてくれませんかエクスタ白石くん」

あたしは大概めんどくさいことに巻き込まれる人間だった。

四天宝寺のバイブルとかゆうエクスタシー野郎があたしと同じクラスなのである。
そいつはもてる。
ファンも多い。

バイブルがあたしに話しかける。

熱狂的なファンの子にバイブルとつき合ってると思われる。

呼び出される。

誤解を解く。

エクスタシー野郎と喋る。

呼び出される。

ひどい無限ループ。かれこれこのやり取りを四回はやった。実にめんどくさい。あたしは毎日を平和に過ごしたいのだ。侑士が四天宝寺におったらこんなめんどくさいことにはならんのに。

「名がメールブチるからやろ」
「侑士と電話してたんやもーん」
「あっそ。それはそれはお邪魔しましたー」

馬鹿にした笑いかたでもやっぱりイケメンはイケメンだ。腐っても鯛とはよく言ったもんやなあ。

「何なん?何か用事あるん?」
「あ、そうそう。さっき謙也が呼んでた」
「ケンヤが?」
「俺が」
「うわっびっくりした!」
「さすが浪速のスピードスターやな!」
「自分で言うなや」

スピードスター謙也はガチですごいと思う。元気で明るくて人よりもちょっと速さのレベルが高い。クールに決める男前の侑士と血が繋がっているとは思えない。

「あんな、名」
「はいはい」
「侑士こっち帰って来るって」
「ほんま?」
「ほんまほんま」
「え、いつ?」
「確か…来週の土日」

そんなこと聞いてない。
メールも入っていなければ、昨日電話もしたのに一言も聞いてない。

「侑士から聞いてないんやけど」
「今聞いたらええやんけ」
「そうですねー」

メール作成画面を開く。

侑士くん、次の土日こっち来るんですか。


ピロピロピロ、色気も何もない着信音。


俺は行かれへん。練習試合やねん。

「まあそうやろなぁと思ったけどね」
「じゃあ俺とどっか行く?」
「うるさい言うてるやろ白石」
「なんかごめん、名」
「いいよ謙也。だいたいわかってたし」

また来るとき言うてよ。

用件だけの一行メールを素早く打ち終わって、パチンとスライドの携帯を閉じた。するりとポケットに入れる。もうすぐ昼休みが終わってしまう。

「さー次体育やでー」
「今日女子何やるん?」
「何やろ?バレーやりたいわ」
「俺らも体育館やから横で名見とくわ」
「白石きっしょー」

やっぱり未来に期待なんていうものはしてはいけない。目の前にあるもの、確かなものだけに期待をする。できるだけ失望はしたくないのだ。



予想通りのこたえ









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