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触れたら溶けて消えてしまいそうな、女の子だった。白すぎる肌はもはや透き通るように美しく、大きな瞳はまばたきするたびにごろりと落ちてしまいそうで怖い。長くて濃いまつげは揺れ、真っ黒な長い髪は痛むことを知らないのだろう。圧巻だった。ごくり、と唾を飲んだ。
「私、恋がしたいの。」彼女がそう言った。「恋をしている女の子は、みんな綺麗になるでしょう?」
「お前さんはもういらんじゃろ」本心だった。「大体お前さんの男がらみの噂は絶えんしの」
「だって、みんな必死で私を好きだと言うんだもの」眉を下げて困った顔をした。「断るのが可哀想で」
ため息が出た。そして彼女から視線をそらした。魔法にかかってしまいそうだった。こんな綺麗な女の子に微笑まれたらどんな男も一溜まりもないだろう。今まで彼女とつき合ったという男はみんな恋人と別れて彼女に告白をしたという。恐ろしい話だ。すべて三日と経たず終わっているが。
「断るのも優しさやろ」
「わざわざ彼女と別れてまでも私に好きと言ってくるのに」
「二時間で飽きるお前さんの方が怖い」
「今度は好きになれるかな、なんて思っちゃうのよねえ」
まったく恐ろしい女だ。悪女の鑑だ。お前のためにいくつのカップルが犠牲になったと思ってる。だけど、そんな狂った女だけど、嫌いになれない俺の方がよっぽど狂っている。
「じゃあ恋って何?」
「そうやのう…その人を見たらドキドキするとか、そういうのんやと思うぜよ」
「ふうん。」
至極どうでもよさそうだった。俺もどうでもよかった。じっと彼女が俺を見てくるから、他に視線を移すことを考えていた。捕らわれるのが怖かった。
「恋したいって言うとったな、お前さん」
「うん。仁王くんとなら私、恋、できると思うの」
そう言って俺の手に細い指を絡めてくる。右側から伝わるぞわぞわした感覚。「ねえ、教えてくれるでしょ?」ああ、目が合ってしまった。微笑まれてしまった。堕ちていく。彼女に。でも、これは恋ではない。言葉にするなら、支配。




110221
三歩先の狂気




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