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二週間前から、柳と私はつきあっている。私の数十回にわたる告白などの猛アタックに、柳が仕方なく折れた感じだったが。それでも私は嬉しかった。どんなに自己中心的な考えでも、柳は私の彼氏なの、と言えることが嬉しかった。柳はため息をつく。でも聞いてくれる。本当にどうでもいいような、私の今日あった出来事。お昼ごはんはお弁当に何が入ってたとか、数学がわかんなかったとか。頭がよくて、テニスが上手で、私よりもずっと凄い彼。そうか、と言ったり、それはよかったな、と相槌をうってくれる。本当にしあわせで、しあわせで、たまらない。ぬるま湯にずうっと浸かっているような感覚。でも居心地がよすぎて、わたしは大事なことを忘れていた。柳は私のことは別にすきじゃないんだろうな、ということを。柳の優しさに、私は救われているということを。
「別れよっか」
休み時間は10分間しかないので、単刀直入に言った。柳のクラスはふたつ向こうだから来るのにそんなに時間はかからないけれど、答えをすぐ出してもらうために休み時間が終わるギリギリに切り出してみた。どうせ、彼はいつもみたいにため息をついて、そうか、って言うのだ。そして、私はいつもみたいに笑ってじゃあね、って言う。シナリオは始めからできあがっている。完璧パーペキパーフェクト、ってね。もう授業開始のチャイムが鳴ってしまう。柳はただ立っている。私を見て。何も言わない。肯定も否定もしない。こんなにじっと見つめられたのは初めてかもしれない。(よかったね私、最後に柳に見つめられて。しあわせに終われる。)帰りたいのに、帰れない。だって、柳が、全身で、待って、って言ってる。
「…お前は自分が何を言ってるのかわかっているのか」
「わかってるよ」
「お前が告白してきたんだろう」
「でも柳は私のこと好きじゃないでしょ?」
「誰がそんなことを言った」
「言わなくてもわかるよ。私が柳にいっぱい押しつけちゃったんだもん」
背の高い彼を見上げ続けるのは少し辛いものがある。でもそらしちゃいけない。柳のきれいな顔立ちがはっきりとわかる。きれいな髪もよくわかる。自分から別れようなんて言っておいて、私やっぱり柳のことだい好きなんだなあ、なんて思う。でも柳のことを思うと、私ばっかり好きじゃだめだと思う。二週間も一緒にいたらちょっとは好きになってすれるかな、なんて期待をした私がバカだった。タイムマシンがあるなら伝えたい。「二週間前の私!柳は諦めた方がいいよ!」一方通行は、しんどい。
「嫌いなら嫌いって、はっきり言ってよ」
これ以上柳を見ていたら、おかしくなりそうだ。目線を床に向けた。(柳の足はおっきいなあ…。)柳はなんにも言わない。
「…とてもじゃないが、伝えきれない」
「それは私をどれだけ嫌いか、ってこと?」
柳はおおきくため息をついて、おおきな両手で私の頬を包み込んだ。そして無理やり、上を向かされる。柳のきれいな切れ目が、私をとらえる。あれ、チャイムってもう鳴ったっけ、まだ鳴ってないっけ。もはや時間の感覚すら失っていた。
「お前をどれだけ愛しているかということを、表現できる言葉が見つからない」
あまりにも予想外な柳の行動とことばに、私はぽかんとして動けなくなった。我ながら阿呆面だと思う。そんな私に、柳は満足げに笑った。きれいに笑うなあ、と感心していると、柳が授業が始まるぞ、と言って、軽く背中を押された。それと同時に鳴ったチャイムと共に、私は走り出した。




110124
あなたの世界が美しくありますように







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