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次に目が覚めたのは、真っ白な天井だった。あまりにも瞬間的な出来事に頭がついていかない。とりあえず、起きあがってみる。周りを見渡した。もうすっかり見慣れた四天宝寺中の保健室だ。そして気づく。びっしょりと汗ばんでいる。あと、泣いている。
「…ちとせ?」
そこにいたのは、さっき消えたはずの、名だった。制服の上にセーターを着、驚く俺を不思議そうに覗く。
「おはよう、…って千歳泣いてる?しかもめっちゃ汗かいてるやん、タオル持ってくるわ」
「…ここ、天国?」
「は?何言ってんの?千歳、熱出て倒れたんやで。めっちゃうなされとったんやから。はい、タオル」
名と、手渡されたタオルを交互に見比べた。ゆめ、…夢?え、いや、ちょっと。…頭が混乱している。名が笑っているのが不思議でしかたない。とりあえず、おそるおそる名の肩に手を伸ばす。触れる。暖かい。ぽかんとしている名を抱きしめる。さわれてる。ここにいてる。
生きてる。
「ちょ、ほんまにどないしたん千歳」
「…名が事故って死んだ夢ば見たと」
「何それ。勝手に殺さんとってよ」
名が笑ってる。ああ、もう何でもいい。暖かい。人ってこんなにも暖かかっただろうか。きつく抱き締めると、名が胸板を叩くので、少し緩めた。
「ほんまに死んでまうやん!」
「す、すまんばい」
名の髪を撫でると、名はくすぐったそうに肩をすくめた。そして額にわざと音をたててキスをした。誰もいない保健室にいやに響く。耳まで赤い名をもう一度抱き締める。
「ほんまに生きとっと?」
「生きてるって。事故った覚えもない」
「なら、よかと…」
「わたし愛されてるねえ」
名がにやついてるのが、顔は見えないがわかる。
「ん、愛しとうよ」
「わっ耳元はあかんよ!反則や!」
じたばた暴れ回る名を押さえつけて、今度はつむじにキスをする。名は急におとなしくなった。真っ赤な顔で、俺を見上げる。
「…ありがとう、千歳」
「なんでお前さんが礼を言うっちゃ」
「わからん、なんか、…なんとなく」
何気なく窓の外に目をやると、白いキラキラがちらついている。初雪だ。
「雪、降っとるばい」
「ほんまや。積もったら雪だるま作ろなあ!」
「どっちがむぞく作れっか勝負すったい」
「負けへんで!」
「勝ったもん勝ちばい」
携帯のデータを確かめてみたが、もちろんあの雪だるまはなかった。そのかわりに、いびつでぶさいくなのと葉っぱなどでデコレーションされた雪だるまがふたつ並んだ写真が、しばらく俺と名との待ち受け画面となった。


101218~110108
ダンケシェーン
(独:ありがとう)




+あとがき
テーマはケータイ小説でした。千歳に意味わからんぐらい愛されたかった。たぶん私が死んだら千歳のとこにいくと思います

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