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裏山についたのは日がのぼりきっていた。名は昨日作った雪だるまの前にしゃがみこんでいた。
「あれ、千歳…早ない?朝練は?」
「知らん」
俺も一緒にしゃがんだ。昨日作ったまま、いびつで小さな雪だるま。名は悲しげに眺める。
「明日あたりにはこの子も溶けてしまうんやね」
「…そうかもしれんね」
「わたしも、一緒におらんくなるんかな」
「名?」
「…なんか元気出えへんねん。なんでやろ…」
今にも泣き出しそうなその声に何も言えなくなる。いや、ただの直感だ。俺のも、財前のも、名のも。いつ消えるかなんてわかるわけない。誰にも。でも、名は、今確かにここにいる。昨日約束したじゃないか、最期まで、そばにいる。
「こいつ、写真撮っとくばい」
「え?」
「そしたら俺の携帯ん中にずっとおるばい。消えんよ」
「…あはは、ほんまや。千歳すごいなあ…」
いびつで、ぶさいくな、ふたりの雪だるま。陽の光で溶けたとしても、決して消えることはない。
「…千歳、泣かんといて」
携帯を持つ手は震えている。泣かないで、と言う名も、泣いていた。意識はしていない。ふたりは涙を零していた。おそらくは、財前も。
「……財前くんも、泣いてる」
「…俺も、そう思うっちゃ」
朝日はどんどん高くなっていく。雲一つ無い、綺麗な青空が、とても恨めしかった。

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