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幸村くんの絵のモデルになる

どうして私なんだろう。わたしじゃなくってもクラスに美人さんはいっぱいいるじゃん。主にリカちゃんとか。ミス立海じゃん。名前の通りお人形さんみたいに足長くて細くて、リカちゃんのこと見てたらなんでわたし人間やってるんだろうって不思議に思えてくる。同じように幸村くんは全国常連のテニス部を率いる部長さんで、すごい人なのだ。しかも神の子とか呼ばれてるらしい。ひいっ怖!何そのあだ名!でも本人さんは怖いわけではない。たぶん。むしろ穏やかで優しい人、だと思う。クラスの女の子たちにもファンはいっぱいいる。リカちゃんもその一人だ。わたしはその他大勢。キラキラ輝いているリカちゃんも彼も、私とは住む世界が違うのだ。なのに、どうして。
「姓さん、下向かないでこっち向いて」
どうして神の子はわたしを描きたいと思われたのでしょうか。おかげでわたしはなんかクラスの怖い女の子たちからすっごいキツい視線を浴びせられるし、それを怖がって友達もよそよそしいし、学校中で幸村くんの絵の人とかいうあだ名がついちゃったし、いいことがない。幸村くんのファンのその他大勢のままでよかったのに、これじゃあとんだ灰かぶりだ。幸村くんだって私を描くならリカちゃんを描くほうが描きやすいだろうに。ほら、きれいだし。
「…幸村くん」
「何だい?」
「リカちゃんと代わったほうがいいんじゃない、かな」
幸村くんの筆は止まらない。
「どうして?」
「リカちゃんのほうがきれいだし…幸村くんの評判が落ちちゃうよ」
「俺は姓さんがいいって言ったんだよ」
「ってゆうかお願いだからリカちゃんとチェンジしてください」
「嫌。君がどう思われようと俺の知ったことじゃない」
この人私がクラスで浮いてるの知ってるんじゃん。幸村くんってこんな人だったんだ。幻滅。優しくて気を配ってくれるような人だと思ってたんだけど。はあ、とため息が出た。もう知らない。そして幸村くんは言い放った。「嫌われるなら嫌われればいい」わたしは頭が真っ白になった。こいつは人のスクールライフをめちゃくちゃにする気か。
そしてできあがった幸村くんの絵の中の私は恥ずかしくなるくらい綺麗に笑っていた。
「だって嫌われれば嫌われるほど、君を俺のものにし易くなるだろう?」




110105
ずるくて卑怯で臆病でそれでいて優しい







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