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不思議なことは連なっていくもので、俺には亡くなったはずの名が見え、名がどこにいるのかがなんとなくわかり、さらに財前にも名が見えるという。どうやらこれで俺が頭がおかしくなったという疑惑は晴れたらしい。だけど、この虚無感はなんだろう。
「…ごめんね、千歳」
なんとなく屋上へ行くと名がいた。ああ、やっぱり、と思った。名はぼんやりと空を見ていて、目は虚ろで、名前を呼んでも、ただ謝るばかりだった。
「お前さんが謝る必要はなか」
「でも、わたしがおるから、千歳も財前くんも変やって思われてるんやろ?」
名は思いつめている。思っていた以上に。次第に名は泣き出してしまった。もう嫌や、とか、ごめんなさい、とか、誰に対するでもなく、ただ思ったことを口に出していた。
「もう、嫌」
「名」
「消えたい」
「そげんこつ言うもんじゃなか」
「でもそうやん!わたしは何しにこんなんなってしもたん?自分でもわからんのに、なんで幽霊になってしもたん?千歳にも、こんなに迷惑ばっかりかけて…っ」
「名!」
名はびく、と肩を揺らす。名を見つけたときのように、抱きしめるような格好をした。名の泣き声は止まった。
「存在しとるんは事実やけん、そげんこつ言いなさんな」
混乱しているのは、俺も一緒だった。
「俺がおるっちゃ」

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