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黒い煙と白い息。

こんなにも対照的で悲しいものは初めてだった。

名によく懐いていた金ちゃんは大声で泣き、白石はそれをなだめることもなく、小石川と謙也はときどき制服の袖で目をこすり、小春と一氏は二人で静かに涙を流し、財前は無表情でずっと下を向いている。
俺は、ただ名が笑う写真を見つめていた。
「…雪、積もったと」
夕べから降り続いた雪は積もり、参列者を寒さに震わせた。
やけに白い空に、煙は高く高く登っていった。




何で亡くなったのかはわからない。いや、聞いた気がするけど、覚えていない。もはや考えるという行為すら面倒になった。
俺は学校に行った。特に理由はない。足が向かっていた。
白石と謙也と名の教室、二人で歩いた廊下、屋上、グラウンド。
今日はどのクラブも練習をしていない。いつも活気ある四天宝寺中が、まるで違うところに見える。
俺はテニスコートに向かっていた。部室、ああ、泣きそうかもしれん。
扉に手をかけたときに、はっと我に返り、手を引いた。
「…俺は何ばしよっとね…」
誰もいるはずがない部室。本当は来たくなかった。それなのに、何を期待してるのだろう。
ふと見ると、鍵のかかっているはずの扉が開いているように見える。
吸い寄せられるように、扉に手をかけ、静かに扉を開けた。
「……名?」
薄暗い部室には、亡くなったはずの名がいた。

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