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突然だった。
名の携帯から、名のお母さんの声で連絡があって、ざーっと、体の中で音がした。
名が、事故にあった。
現実味がなくて、名の容態も何も聞いてないのに、心がざわついてしかたなかった。
『あ、でも全然平気なんよ。ちょっと頭打ったみたいで今病院で検査してるんやけど、普通に歩いてるし』
「…どこの病院ですか」
気持ち悪い。この感じ。安心しきれない。名に会わないと。



病院についたときには息はとうに切れていた。汗だくになった俺を見て、名のお母さんは笑っていた。
「あらまあ千歳くん」
「名は…」
「もう出てくるんちゃうかな。それにしても名は愛されてるんやねぇ」
なんだか照れくさくなった。
気を紛らわすために、椅子に座ってため息をついた。でもまだ、胸騒ぎがする。
椅子に座ってすぐのことだった。
診察室から出てきた名は頭に包帯を巻いて、驚いた顔をしていた。
「え、どないしたん千歳」
「事故ったって聞いたと」
「だ、誰に?お母さん?」
「そうたい。頭打ったって」
「あーちょっとだけね」
「…どこも、悪くなか?」
我ながら情けない声だと思った。名の笑顔に安心して、涙が出そうになった。
「平気やって。歩けてるやろ?」
「…よかった」
ちっさい名を引き寄せて、抱きしめた。あったかい。名の匂いがする。
生きとる。
「ほんまに、よかったと…死んだか思った」
「ちょっ、千歳…!ここ病院やし、お母さんいてるのに!」
名の抵抗を、聞こえないふりをして、さらにきつく抱きしめた。


それでもやっぱり胸騒ぎは収まらなかった。

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